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2014.02.12

訴訟の長期化と遅延損害金

 大学病院に対して約7500万円損害賠償義務を認めた判決が最高裁でも維持された旨が報じられています。
 http://www.nikkei.com/article/DGXNASDG10033_R10C14A2CR8000/
 事案の詳細は全く知らないのですが,病院側が敢えて上告等までしていることを考えますと,高裁判決には重大な欠陥があったのだろうと推察致しますが,最高裁判所がそのことを理解しなかったのであろうと思われることはとても残念なことだと思います。

 なお,患者は「2004年9月に大腸炎のため入院し大腸全摘などの手術を受けたが、12月に感染症による敗血症で死亡した」とされていますので,最高裁判所の判決が出されるまでに8年強の時が過ぎたことになります。最高裁まで行ような事案は,解決までに長い時間を要しますが,医療裁判ともなればそれが顕著となります。特に最高裁での審理は,現在のところ,年単位を要することが少なくないといえますので,敗訴判決に対して上告等をすることは,訴訟さらなる長期化のリスクを覚悟しなければならないこととなります。
 長期化だけでもリスクといえますが,長期間の裁判において病院側が負けたときに生じる他のリスクの一つが「遅延損害金の増大」です。
遅延損害金は
不法行為を理由とする損害賠償の場合は,不法行為日から起算から(初日算入)
債務不履行を理由とする損害賠償の場合は,支払請求があった日の翌日から(民法412条3項)
起算されます。
そして,
一般的には,不法行為による方が起算点が早いため遅延損害金がより高額となりますので,それに基づく遅延損害金支払を求められます。
ところで,
民法は,遅延損害金を法定利率によるとしており,且つ法定利率を(原則として)年5分と定めています。
(金銭債務の特則)
第419条 金銭の給付を目的とする債務の不履行については、その損害賠償の額は、法定利率によって定める。ただし、約定利率が法定利率を超えるときは、約定利率による。
2 前項の損害賠償については、債権者は、損害の証明をすることを要しない。
3 第一項の損害賠償については、債務者は、不可抗力をもって抗弁とすることができない。
(法定利率)
第404条 利息を生ずべき債権について別段の意思表示がないときは、その利率は、年5分とする。

 ところで,年利5分は,現在の実勢金利を考えますと,極めて高い金利といえます。
 本件では,約7500万円の損害賠償金とされており,死亡時(この時点を不法行為時とすることが一般的です)から約8年が経過しているとなると,遅延損害金は約3000万円にもなります。
 しかし,年5分は,現時点では,非現実的な高率といえるのですが,以前にも指摘しましたが,かつては貸付利子歩合(注,かつての公定歩合)が5分を超えていたことがあります。
https://www.boj.or.jp/statistics/boj/other/discount/discount.htm/
平成 2(1990)年 3月20日 5.25
平成 2(1990)年 8月30日 6.00
平成 3(1991)年 7月 1日 5.50
平成 3(1991)年11月14日 5.00
なお
昭和48(1973)年12月22日 9.00
昭和55(1980)年 3月19日 9.00
が最高利率となります。
(注:正確には,商業手形割引歩合ならびに国債、特に指定する債券または商業手形に準ずる手形を担保とする貸付利子歩合)
 年5分を超えていた場合には,法定利率は実勢の金利より押さえ込まれていたことになりますので,長期的に見てかつ平準させて考えますと,現在の法定利率もあながち誤っているとはいえないことになります。
 しかし,近い将来5分に達することが困難と見込まれる現在においては,やはり問題です。

 現在民法が改正作業が行われていますが,改正法では,実勢との乖離を少なくすること及び金利計算の手間とのバランスをはかって,(年毎の)変動相場制を導入することが考えられています。
因みに,中間試案では次のような案が示されています。
法定利率(民法第404条関係)
(1) 変動制による法定利率
民法第404条が定める法定利率を次のように改めるものとする。
ア 法改正時の法定利率は年[3パーセント]とするものとする。
イ 上記アの利率は,下記ウで細目を定めるところに従い,年1回に限り,基準貸付利率(日本銀行法第33条第1項第2号の貸付に係る基準となるべき貸付利率をいう。以下同じ。)の変動に応じて[0.5パーセント]の
刻みで,改定されるものとする。
ウ 上記アの利率の改定方法の細目は,例えば,次のとおりとするものとする。
(ア) 改定の有無が定まる日(基準日)は,1年のうち一定の日に固定して定めるものとする。
(イ) 法定利率の改定は,基準日における基準貸付利率について,従前の法定利率が定まった日(旧基準日)の基準貸付利率と比べて[0.5パーセント]以上の差が生じている場合に,行われるものとする。
(ウ) 改定後の新たな法定利率は,基準日における基準貸付利率に所要の調整値を加えた後,これに[0.5パーセント]刻みの数値とするための後,これに[0.5パーセント]刻みの数値とするための所要の修正を行うことによって定めるものとする。
(注1)上記イの規律を設けない(固定制を維持する)という考え方がある。
(注2)民法の法定利率につき変動制を導入する場合における商事法定利率(商法第514条)の在り方について,その廃止も含めた見直しの検討をする必要がある。

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