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2015年2月

2015.02.28

裁判提起の難しさ(セクハラ発言に関する最高裁判決を読んで考えること)

何のために裁判を・・・・
セクハラ判決(最高裁)

訴訟を提起した2人は,セクハラ発言による降格処分等を争って裁判提起。
その事は理解できます。...
しかし,その結果は,所期の目的を達することが出来なかったばかりか,2人の発言内容が,最高裁判決を起点として世間に広まった。
マスコミやネットにて拡散される。

同じ職場で居続けることができるのだろうか?
家庭は大丈夫なのだろうか?
そんな心配をしてしまいます。

判決内容が(一部ですが)ネットで開示される現在
そのことをも視野に入れて訴訟提起等を考えなければならないということですね。
しかし,現実問題として,そのようなことまでを想定しての裁判提起など,なかなか出来ないことですからね。

最高裁判決
平成26年(受)第1310号 懲戒処分無効確認等請求事件
平成27年2月26日 第一小法廷判決
http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/883/084883_hanrei.pdf

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「調査の目的・結果について,遺族が納得する形で説明する」こととは?

厚生労働省の「医療事故調査制度の施行に係る検討会」では,医療法の省令等の内容が検討されていますが,既に第6回目が開催されています。
その第6回目に配付された資料を前提に考えてみたいと思います。

検討会では

・どのような「事故」について調査をしなければならないのか?
・調査した「結果(調査報告書)」を遺族に渡さなければならないのか?

等の点について議論が割れています。
他にも色々と議論されているのですが,この2点について私の雑感(個人的意見)を書かせて頂きます。

1.事故調査を要する範囲(調査義務の範囲)について
  事故調査を要するのは「医療事故」があった場合となります。
  医療法は,医療事故を「当該病院等に勤務する医療従事者が提供した医療に起因」するものと明示されています。
 この「医療」「管理」が含まれるのか?ということが議論され,当初は「管理」を除外する方向性も検討されたようですが,現状では次の通り,厚労省は「管理」を含む方向性を示しています。
http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-10801000-Iseikyoku-Soumuka/0000075316.pdf
●「医療」に含まれるものは制度の対象であり,「医療」の範囲に含まれるものとして,手術,処置,投薬及びそれに準じる医療行為(検査,医療機器の使用,医療上の管理など)が考えられる。
●施設管理等の「医療」に含まれない単なる管理は制度の対象とならない。
 「管理」が含まれますと,術後管理は当然として,それ以外にも見落とし,誤嚥,転落,転倒まで入る可能性が高く,高齢者の多い昨今をも勘案致しますと調査義務の範囲は相当広くなることが想定されます。
 なお,要件に該当する事故については,調査義務が生じますので,理論上は,例えば,遺族が調査不要であると理解を示したとしても,病院は,センターに報告のうえで調査をして,事故調査報告書を作成の上で,その結果をセンターに報告しまた遺族にも説明しなければならないことになります。
 因みに,院内事故調査は,病院サイドの自己負担(自腹)が予定されていますので,事故調査の対象数が多くなると,人手・費用の点で大きな影響を及ぼすことを覚悟しなければなりません(なお,地域を問わずまた診療所も除外されません)。
 また,大学病院等調査のための派遣要請を受けて調査のために人材を供出しなければならない病院等にとっても影響の大きい問題です。
 現状,診療についてすら人員が不足しているとされていることを考えますと,それほど調査範囲を拡げてしまって,実際の診療が大丈夫なのだろうか?という点が危惧されます。特に,地方の病院や診療所にとっては深刻な問題なのだろうと考えています。
人不足が叫ばれる現状において,数多くの調査のために医師等のスタッフが必要となり,実際の診療に当たる医療スタッフが不足するという事態の発生も懸念されるのです。

2.事故調査報告書の遺族への交付について
 従前,厚労省は次のような内容を示していました。
●遺族への説明については,口頭(説明内容をカルテに記載)又は書面(報告書又は説明用の資料)の適切な方法を管理者が判断する
●調査の目的について,遺族に対して分かりやすく説明する。
 つまり,口頭説明をするのか文書を交付するのかは病院が判断すれば良いということでした。
しかし,
第6回の検討会において,厚労省案が一転しました。
http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-10801000-Iseikyoku-Soumuka/0000075314.pdf
●遺族への説明については,口頭(説明内容をカルテに記載)又は書面(報告書又は説明用の資料)若しくはその双方の適切な方法により行う(← 重要点:「管理者が判断する」が削除されている)。
●調査の目的・結果について,遺族が納得する形で説明するよう努めなければならない。(←重要点:「結果」が挿入され,遺族が納得する「形」で説明することが求められる

 文字の変更だけでは何のことかと思うでしょうが,要するに内容だけで無く,説明の方法としても遺族の納得を得ることが必要であり,遺族が事故調査報告書を要求すれば(=口頭説明で納得しなければ)病院サイドはそれに応じなければならないということです

 つい先日,ある公立病院の事務方と話をさせていただいていたのですが,上記のような問題点というより,そもそも事故調査そのものについて関心がなかったとのことで,私の現状に関する説明を聞いて「驚いた。そんなことになってしまっているのですか。」との旨を話されることがありました。これが,医療界の実情なのでしょうね。

 先般,東京女子医大の件で,警視庁が東京女子医大に対して文書で,「事故調査報告書」の提出を求めたところ,東京女子医大は,強制捜査を免れるためにやむなく「事故調査報告書」を捜査機関に提出したということが報じられていました。

 このようなことも含めて,調査に協力すると,その情報が外部の手に渡り,そのことによって,責任追及がなされることにつながる事態が一般に理解されることとなると,(院内での)事故調査に積極的に協力する者がいなくなってしまうことが危惧されます。
 そうなると,余計に医療安全が図れないことになり,その結果として,多くの患者にその弊害が及ぶということが理解されていないように感じられます。

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「院内事故調査報告書、遺族にも見せるべきか否か?」というキャンペーンについて

「院内事故調査報告書、遺族にも見せるべきか否か?」

このようなキャンペーンをしてしまえば,結論は明らかでしょう。
「医療事故で亡くなられた遺族は開示を求めている。」,「病院側はそれに抵抗している」
という副題がつけば,流れを変えることはできないでしょう。

概ねマスコミは,このような報道しかしていないように映ります。
また,そのようなキャンペーンに打って出た者の勝ちでしょう(笑)

「原因不明の事態により大事な生命が奪われてしまっています,将来に向けて,そのような原因不明の事態から,より多くの方々の生命・身体の安全を確保するためにはどのような方法がより妥当ですか?」
という視点で考えていかなければならない問題であるのに。

そもそもなぜこのようなことが議論されているのかを,もう一度考え直す必要があるのではないかと感じております?

どうすれば,医療事故の再発からより多くの方々の生命身体を護ることができるのか?」
という視点から。

今までの議論は次のようなものであったと個人的には理解をしています。

医療事故が発生した
他の人にも発生するかも知れない
それを阻止することが大事である。
・そのためには原因を明らかにすることが必要である。
原因究明がこそが,多くの方々の生命・身体の安全を守ることへの第1歩である。
・では,原因究明はどうして行うのか。
関係者からのヒアリング等が不可欠である。
・しかし,関係者は,自己への責任追及が大前提となるならば,原因究明に協力しないことが考えられる(ここでの責任追及には,刑事責任・損害賠償責任・懲戒処分等が含まれる)。
・そうなると,不十分な原因調査に終わってしまう可能性が高くなる。
・原因調査が不十分ならば,原因の究明は困難である。
・そうなると,同種の医療事故の再発の可能性を低くすることが出来ない
・そうなると,多くの方の生命・身体の安全性が改善されないのでは?
より多くの方の生命・身体の安全性を確保が一番の価値であると考えるならば,充実した調査が出来るような環境を整えるべきである。
・できる限り事故調査に協力した者について協力したことをもってその責任が問われない体制を構築することが重要である。何でも率直に話の出来る環境作りをしよう。

参照(厚生労働法のホームページより)
医療事故調査制度について
Q1. 制度の目的は何ですか?
A1. 医療事故調査制度の目的は、医療法の「第3章 医療の安全の確保」に位置づけられているとおり、医療の安全を確保するために、医療事故の再発防止を行うことです。      
  <参考>
医療に関する有害事象の報告システムについてのWHOのドラフトガイドラインでは、報告システムは、「学習を目的としたシステム」と、「説明責任を目的としたシステム」に大別されるとされており、ほとんどのシステムではどちらか一方に焦点を当てていると述べています。その上で、学習を目的とした報告システムでは、懲罰を伴わないこと(非懲罰性)、患者、報告者、施設が特定されないこと(秘匿性)、報告システムが報告者や医療機関を処罰する権力を有するいずれの官庁からも独立していること(独立性)などが必要とされています。
今般の我が国の医療事故調査制度は、同ドラフトガイドライン上の「学習を目的としたシステム」にあたります。したがって、責任追及を目的とするものではなく、医療者が特定されないようにする方向であり、第三者機関の調査結果を警察や行政に届けるものではないことから、WHOドラフトガイドラインでいうところの非懲罰性、秘匿性、独立性といった考え方に整合的なものとなっています。
http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000061209.html

関係者の協力の成果であるところの事故調査報告書が遺族等に手渡されるならば,例え調査報告書において匿名扱いとなっていたとしても実際上は特定されてしまうことを考えると,調査への協力の妨げになる可能性がある。
よって,多くの方の生命・身体の安全性の確保に帰するためのより充実した原因究明のためには,調査報告書を一律渡してしまうことは控えるべきであって,調査報告書を渡すかどうかは,調査の過程等を十分に理解している病院管理者の判断に委ねた方がよいのではないのか?

このような議論が今までなされてきたはずです。
しかし,目の前の議論は,それが置き去りにされてしまっている感があります。
ただし,
このような理解は,かなり説明の要することであり,単刀直入を求めるマスコミが報道するには向いていないので,切り捨てられてしまう運命にあるのでしょうね。

しかし,その原点を振り返って,今一度考えてもらいたいものだと思います。
今の議論は,不特定多数のこれから被害を受けるであろう方の被害をどのように最小限に留めるのか?というものであるはずです。よって,特定の遺族のための議論では無く,もっともっと大きな理念をもった制度に関するものであり,その視点からの発想が必要であるということです。

より充実した調査がなされることによって原因が究明され,そして,その改善がなされることで利益を受けるのも,現在存命中の多くの方々なのです。
また,不十分な調査が生じることのリスクを甘受しなければならないのは,実は,現在存命中の多くの方々なのです。

多くの方々が,このような視点をもって,今一度,再考することが必要だと,私は考えています。

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2015.02.22

東京マラソンに参加してきました。

平成27年2月22日開催の東京マラソンに参加して参りました。
7年ぶり2回目の東京を堪能させていただきました。

色々あれども,ゴールに達することが出来て何よりの結果

タイムはネットタイムで4時間14分台(正式タイムは4時間15分台)

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2015.02.19

平成27年2月17日最高裁判所第三小法廷判決(求償権と消滅時効関連)

平成24(受)1831求償金等請求事件
平成27年2月17日最高裁判所第三小法廷判決

原審
大阪高等裁判所
平成23(ネ)3120
平成24年5月24日

裁判要旨
事前求償権を被保全債権とする仮差押えは,事後求償権の消滅時効をも中断する効力を有する
http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=84862

判決文より
http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/862/084862_hanrei.pdf

原審の適法に確定した事実関係の概要等は,次のとおりである。
(1) 上告人Y1(以下「上告人Y1」という。)は,平成2年5月11日,株式会社Aとの間で,貸越極度額500万円の貸越契約を締結した。その際,被上告人は,上告人Y1との間で同年2月26日に締結した信用保証委託契約(以下「本件信用保証委託契約」という。)に基づき,Aに対し,上記貸越契約に基づく上告人Y1の債務を保証した。上告人Y1は,Aから,上記貸越契約に基づき借入れをし,平成6年10月当時の借入残元本の金額は,499万9548円であった。
(2) 上告人Y2は,平成2年2月26日,被上告人との間で,本件信用保証委託契約に基づき上告人Y1が被上告人に対して負担すべき債務について連帯保証する旨の契約をした。
(3) 上告人Y1がAに対する前記(1)の債務につき約定の分割弁済をしなかったため,被上告人は,平成6年10月17日,上告人Y1を債務者として,上告人Y1所有の不動産につき,本件信用保証委託契約に基づく事前求償権を被保全債権とする不動産仮差押命令の申立てをし,同日に仮差押命令を得て,仮差押登記をした。
(4) 上告人Y1は,平成6年11月4日,Aに対する前記(1)の債務の期限の利益を失った。被上告人は,同月18日,Aに対し,前記(1)の借入残元本499万9548円及び約定利息4万7461円の合計額504万7009円を代位弁済し,上告人Y1に対する求償権を取得した。
(5) 被上告人は,平成22年12月24日,上告人Y1及びその連帯保証人である上告人Y2に対し,前記(4)の求償権等に基づき,連帯して504万7009円及び遅延損害金の支払を求める本件訴訟を提起した。上告人らが上記求償権の消滅時効を主張するのに対し,被上告人は前記(3)の事前求償権を被保全債権とする仮差押えにより消滅時効が中断していると主張して争っている。

原審は,事前求償権を被保全債権とする仮差押えは,民法459条1項後段の規定に基づき主たる債務者に対して取得する求償権(以下「事後求償権」という。)の消滅時効をも中断する効力を有するなどとして,被上告人の請求を認容すべきものとした。

所論は,事前求償権と事後求償権とが発生要件等を異にし,別個の権利であることに照らせば,事前求償権を被保全債権とする仮差押えによっては事後求償権の消滅時効は中断しないと解すべきであるというものである。

事前求償権を被保全債権とする仮差押えは,事後求償権の消滅時効をも中断する効力を有するものと解するのが相当である。
その理由は,次のとおりである。
事前求償権は,事後求償権と別個の権利ではあるものの(最高裁昭和59年(オ)第885号同60年2月12日第三小法廷判決・民集39巻1号89頁参照),事後求償権を確保するために認められた権利であるという関係にあるから,委託を受けた保証人が事前求償権を被保全債権とする仮差押えをすれば,事後求償権についても権利を行使しているのと同等のものとして評価することができる。
また,上記のような事前求償権と事後求償権との関係に鑑みれば,委託を受けた保証人が事前求償権を被保全債権とする仮差押えをした場合であっても民法459条1項後段所定の行為をした後に改めて事後求償権について消滅時効の中断の措置をとらなければならないとすることは,当事者の合理的な意思ないし期待に反し相当でない

5 以上と同旨の原審の判断は,正当として是認することができる。論旨は採用することができない。
よって,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 木内道祥 裁判官 岡部喜代子 裁判官 大谷剛彦 裁判官大橋正春 裁判官 山崎敏充)

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平成27年2月19日最高裁判所第一小法廷判決(有利発行関連)

平成25(受)1080損害賠償請求事件
平成27年2月19日最高裁判所第一小法廷判決

【破棄自判】

原審
東京高等裁判所
平成24(ネ)2826
平成25年1月30日

裁判要旨
非上場会社が株主以外の者に発行した新株の発行価額が商法(平成17年法律第87号による改正前のもの)280条ノ2第2項にいう「特ニ有利ナル発行価額」に当たらない場合

http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=84873

判決文より
http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/873/084873_hanrei.pdf

本件は,上告補助参加人(以下「参加人」という。)の株主である被上告人が,参加人の取締役であった上告人らに対し,平成16年3月の新株発行(以下「本件新株発行」という。)における発行価額は商法(平成17年法律第87号による改正前のもの。以下同じ。)280条ノ2第2項の「特ニ有利ナル発行価額」に当たるのに,上告人らは同項後段の理由の開示を怠ったから,同法266条1項5号の責任を負うなどと主張して,同法267条に基づき,連帯して22億5171万5618円及びこれに対する遅延損害金を参加人に支払うことを求める株主代表訴訟である。
上告人らは,本件新株発行における発行価額は「特ニ有利ナル発行価額」に当たらないなどと主張して,これを争っている。

原審の適法に確定した事実関係の概要等は,次のとおりである。
(1) 参加人は,平成16年3月当時,非上場会社であり,株式の譲渡につき取締役会の承認を要する旨の定款の定めがあった。
本件新株発行前における参加人の発行済株式の総数は40万株であり,これらは役員,幹部従業員等によって保有されていた。
(2) 参加人は,株式の上場を計画し,平成12年5月,新株引受権の権利行使価額を1株1万円とする新株引受権付社債を発行した。
しかしながら,その後,参加人では,主力商品の展開に失敗して売上げの減少が続いた上,不動産について巨額の含み損を抱えるに至り,有利子負債の額も増大した。参加人は,取引銀行に対して返済停止や追加融資を要請したが,いずれも断られたり,難色を示されたりした。そこで,参加人は,役員報酬及び従業員給与の削減,定期昇給の凍結,広告費の削減等を断行したほか,不動産を順次売却した。
参加人では,平成10年度から平成12年度までの3事業年度(4月1日から翌年の3月31日までをいう。以下同じ。)には1株当たり150円の配当がされていたが,平成13年度及び平成14年度には配当がされなかった。
(3) 参加人では,平成13年頃から,参加人の株式を保有する役員,幹部従業員等の退職が相次いだ。代表取締役の上告人Y1その他の役員等は,退職者からその保有する株式の買取りを求められ,その都度,1株1500円でこれらを買い取った。
参加人は,平成14年7月から同年10月までの間,上告人Y1から上記株式の一部を1株1500円で購入し,自己株式とした。もっとも,参加人は,取引銀行からの要請等を踏まえ,平成15年11月,上告人Y1に対してこれらの自己株式を1株1500円で売却した。
なお,上告人Y1は,平成14年12月,幹部従業員約40名に対し,上告人Y1の引き続き保有する株式を1株1500円で購入するよう希望者を募ったが,希望者はほとんど現れなかった。また,上記(2)の新株引受権付社債については,平成15年6月,参加人の株主総会において,新株引受権の権利行使価額を1株1500円に変更する旨の特別決議がされた。
(4) 参加人は,平成15年11月に行われた自己株式の処分に先立ち,B公認会計士(以下「B会計士」という。)に参加人の株価の算定を依頼した。
B会計士は,平成15年10月頃,参加人から,①平成12年度から平成14年度までの決算書(貸借対照表,損益計算書及び利益処分計算書),営業報告書及び附属明細書,②平成14年度の法人税確定申告書及び勘定科目内訳書,③参加人の過去の株式売買実績例及び株式移動表並びに株主名簿,④相続税路線価による参加人保有土地の評価資料,ゴルフ場等の含み損益に関する資料及び債権の貸倒引当金の明細等の提出を受けた。また,B会計士は,参加人の担当部長と面談し,建物及び子会社株式にも含み損があることや,株価算定の基礎資料となる事業計画は存在しないことなどを確認した。
その上で,B会計士は,平成15年10月31日,次のアからウまでの理由により,参加人の同年6月26日以降の株価を1株1500円と算定し,その旨参加人に報告した。
ア 参加人の株式は,一時的に無配であるものの,それ以前は継続して配当が行われてきたことや,一定期間,利益配当に係る期待値によって評価された価格により株式売買が行われてきたことを考慮すると,配当還元法により算定するのが適切と考えられる。
イ 参加人では,従前は1株当たり150円の配当がされており,直近の過去2事業年度は経営体質の強化を目的として一時的に無配としたものにすぎず,今後,利益配当を復活させることを予定しているのであって,直近の取引事例にも照らすと,株価の算定に当たっては,1株当たりの配当金額を150円とするのが相当である。そして,これを財産評価基本通達の配当還元法の算式で用いられている資本還元率で還元すると,1株当たりの評価額は1500円と算定される。
ウ 参加人の時価純資産に巨額のマイナスが生じていることや,株価算定の基礎資料となる事業計画はないこと,売上げも減少傾向にあることなどからすれば,簿価純資産法,時価純資産法,収益還元法,DCF法及び類似会社比準法は採用しない。
(5)ア 参加人は,店舗改修等の設備投資資金及び運転資金を調達するとともに,役員や幹部従業員に株式を保有させて経営への参画意識を高めることを目的として,本件新株発行を行うことにした。もっとも,これは上記(3)の自己株式の処分と同一事業年度内での新株発行であり,B会計士の算定結果の報告から4箇月程度しか経過していなかったため,改めて専門家の意見を聴取することはなかった。
イ まず,平成16年2月19日,参加人の取締役会において,次のとおり本件新株発行を行う旨の決議がされた。
新株の種類及び数 普通株式4万株
発行価額 1株1500円
払込期日 同年3月24日
割当先 上告人Y12万3000株,上告人Y25000株,上告人Y31000株,C6000株,D2000株,E2000株,F1000株
ウ これを踏まえ,上告人Y1は,株主らに対し,本件新株発行における新株の種類及び数,発行価額,払込期日,割当先等を記載した株主総会招集通知を送付した。
そして,平成16年3月8日,参加人の株主総会において,本件新株発行を行う旨の特別決議がされた。その際,上告人らは,「特ニ有利ナル発行価額」をもって株主以外の者に対し新株を発行することを必要とする理由の説明はしなかった。
(6) 参加人の平成15年度の決算は増収増益となり,有利子負債の額も減少に転じ,1株100円の配当が行われた。また,平成16年度には広告宣伝の効果もあって新商品の売上げが伸び,増収増益となり,有利子負債の額も大きく減少し,1株150円の配当がされた。平成17年度には,新商品の相次ぐ投入や,店舗の刷新等の設備投資の結果,商品の売行きは好調となった。
参加人は,株式の上場を再び視野に入れるようになり,平成18年2月には1株を10株にする株式分割を行い,同年3月には新株22万株を1株900円で発行した。

原審は,次のとおり判断して,被上告人の請求を一部認容すべきものとした。
参加人の株式は,平成12年5月時点で1株1万円程度,平成18年3月時点で1株(株式分割前)9000円程度の価値を有していたというべきところ,DCF法によれば平成16年3月時点の価値は1株7897円と算定されるのであって,これに諸般の事情も併せ考慮すると,本件新株発行における公正な価額は少なくとも1株7000円を下らないというべきであるから,本件新株発行の発行価額(1株1500円)は「特ニ有利ナル発行価額」に当たる。なお,B会計士の採用した配当還元法は,主として少数株主の株式評価において,安定した配当が継続的に行われている場合に用いられる評価手法であって,本件においては相当性を欠く。

しかしながら,原審の上記判断は是認することができない
 その理由は,次のとおりである。
(1) 非上場会社の株価の算定については,簿価純資産法,時価純資産法,配当還元法,収益還元法,DCF法,類似会社比準法など様々な評価手法が存在しているのであって,どのような場合にどの評価手法を用いるべきかについて明確な判断基準が確立されているというわけではない。また,個々の評価手法においても,将来の収益,フリーキャッシュフロー等の予測値や,還元率,割引率等の数値,類似会社の範囲など,ある程度の幅のある判断要素が含まれていることが少なくない
株価の算定に関する上記のような状況に鑑みると,取締役会が,新株発行当時,客観的資料に基づく一応合理的な算定方法によって発行価額を決定していたにもかかわらず,裁判所が,事後的に,他の評価手法を用いたり,異なる予測値等を採用したりするなどして,改めて株価の算定を行った上,その算定結果と現実の発行価額とを比較して「特ニ有利ナル発行価額」に当たるか否かを判断するのは,取締役らの予測可能性を害することともなり,相当ではないというべきである。
したがって,非上場会社が株主以外の者に新株を発行するに際し,客観的資料に基づく一応合理的な算定方法によって発行価額が決定されていたといえる場合には,その発行価額は,特別の事情のない限り,「特ニ有利ナル発行価額」には当たらないと解するのが相当である。

(2) これを本件についてみると,B会計士は決算書を初めとする各種の資料等を踏まえて株価を算定したものであって,B会計士の算定は客観的資料に基づいていたということができる。
B会計士は,参加人の財務状況等から配当還元法を採用し,従前の配当例や直近の取引事例などから1株当たりの配当金額を150円とするなどして株価を算定したものであって,本件のような場合に配当還元法が適さないとは一概にはいい難く,また,B会計士の算定結果の報告から本件新株発行に係る取締役会決議までに4箇月程度が経過しているが,その間,参加人の株価を著しく変動させるような事情が生じていたことはうかがわれないから,同算定結果を用いたことが不合理であるとはいえない。これに加え,本件新株発行の当時,上告人Y1その他の役員等による買取価格,参加人による買取価格,上告人Y1が提案した購入価格,株主総会決議で変更された新株引受権の権利行使価額及び自己株式の処分価格がいずれも1株1500円であったことを併せ考慮すると,本件においては一応合理的な算定方法によって発行価額が決定されていたということができる。
そして,参加人の業績は,平成12年5月以降は下向きとなり,しばらく低迷した後に上向きに転じ,平成18年3月には再度良好となっていたものであって,平成16年3月の本件新株発行における発行価額と,平成12年5月及び平成18年3月当時の株式の価値とを単純に比較することは相当でなく,他に上記特別の事情に当たるような事実もうかがわれない。
したがって,本件新株発行における発行価額は「特ニ有利ナル発行価額」には当たらないというべきである。

5 以上と異なる原審の判断には,判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反がある。論旨は理由があり,原判決中上告人ら敗訴部分は破棄を免れない。そして,以上説示したところによれば,上記部分に関する被上告人の請求はいずれも理由がないから,同部分につき第1審判決を取り消し,同部分に関する請求をいずれも棄却すべきである。
よって,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 山浦善樹 裁判官 櫻井龍子 裁判官 金築誠志 裁判官白木 勇)

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平成27年2月19日最高裁判所第一小法廷判決(共有株式についての議決権行使関連)

平成25(受)650株主総会決議取消請求事件

平成27年2月19日最高裁判所第一小法廷判決

原審
東京高等裁判所
平成24(ネ)5048 平成24年11月28日

裁判要旨
1 共有に属する株式について会社法106条本文の規定に基づく指定及び通知を欠いたまま権利が行使された場合における同条ただし書の株式会社の同意の効果
2 共有に属する株式についての議決権の行使の決定方法 http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=84875

判決文より
http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/875/084875_hanrei.pdf

原審の適法に確定した事実関係の概要等は,次のとおりである。
(1) 上告人は,特例有限会社であり,その発行済株式の総数は3000株である。 上記3000株のうち2000株は,Aが保有していたが,Aが平成19年に死亡したため,いずれもAの妹である被上告人及びBが法定相続分である各2分の1の割合で共同相続した。Aの遺産の分割は未了であり,上記2000株は,被上告人とBとの共有に属する(以下,上記2000株を「本件準共有株式」という。)。
(2) Bは,平成22年11月11日に開催された上告人の臨時株主総会(以下「本件総会」という。)において,本件準共有株式の全部について議決権の行使(以下「本件議決権行使」という。)をした。上告人の発行済株式のうちその余の1000株を有するCも,本件総会において,議決権の行使をした。 他方,被上告人は,本件総会に先立ち,その招集通知を受けたが,上告人に対し,本件総会には都合により出席できない旨及び本件総会を開催しても無効である旨を通知し,本件総会には出席しなかった。
(3) 本件総会において,上記(2)の各議決権の行使により,①Dを取締役に選任する旨の決議,②Dを代表取締役に選任する旨の決議並びに③本店の所在地を変更する旨の定款変更の決議及び本店を移転する旨の決議がされた(以下,上記各決議を「本件各決議」という。)。 (4) 本件準共有株式について,会社法106条本文の規定に基づく権利を行使する者の指定及び上告人に対するその者の氏名又は名称の通知はされていなかったが,上告人は,本件総会において,本件議決権行使に同意した。

2 本件は,被上告人が,本件各決議には決議の方法等につき法令違反があると主張して,上告人に対し,会社法831条1項1号に基づき,本件各決議の取消しを請求する訴えである。会社法106条本文の規定に基づく指定及び通知を欠いたままされた本件議決権行使が,同条ただし書の上告人の同意により適法なものとなるか否かが争われている。

原審は,会社法106条ただし書について,同条本文の規定に基づく権利を行使する者の指定及び通知の手続を欠いていても,株式の共有者間において当該株式についての権利の行使に関する協議が行われ,意思統一が図られている場合に限って,株式会社の同意を要件に当該権利の行使を認めたものであるとした。その上で,原審は,本件は上記の場合には当たらないから,上告人が本件議決権行使に同意していても,本件議決権行使は不適法であり,決議の方法に法令違反があることになるとして,本件各決議を取り消した。

所論は,会社法106条ただし書は株式会社の同意さえあれば特定の共有者が共有に属する株式について適法に権利を行使することができる旨を定めた規定であるというものである。

5 会社法106条本文は,「株式が二以上の者の共有に属するときは,共有者は,当該株式についての権利を行使する者一人を定め,株式会社に対し,その者の氏名又は名称を通知しなければ,当該株式についての権利を行使することができない。」と規定しているところ,これは,共有に属する株式の権利の行使の方法について,民法の共有に関する規定に対する「特別の定め」(同法264条ただし書)を設けたものと解される。その上で,会社法106条ただし書は,「ただし,株式会社が当該権利を行使することに同意した場合は,この限りでない。」と規定しているのであって,これは,その文言に照らすと,株式会社が当該同意をした場合には,共有に属する株式についての権利の行使の方法に関する特別の定めである同条本文の規定の適用が排除されることを定めたものと解される
そうすると,共有に属する株式について会社法106条本文の規定に基づく指定及び通知を欠いたまま当該株式についての権利が行使された場合において,当該権利の行使が民法の共有に関する規定に従ったものでないときは,株式会社が同条ただし書の同意をしても,当該権利の行使は,適法となるものではないと解するのが相当である。 そして,共有に属する株式についての議決権の行使は,当該議決権の行使をもって直ちに株式を処分し,又は株式の内容を変更することになるなど特段の事情のない限り,株式の管理に関する行為として,民法252条本文により,各共有者の持分の価格に従い,その過半数で決せられるものと解するのが相当である。

6 これを本件についてみると,本件議決権行使は会社法106条本文の規定に基づく指定及び通知を欠いたままされたものであるところ,本件議決権行使の対象となった議案は,①取締役の選任,②代表取締役の選任並びに③本店の所在地を変更する旨の定款の変更及び本店の移転であり,これらが可決されることにより直ちに本件準共有株式が処分され,又はその内容が変更されるなどの特段の事情は認められないから,本件議決権行使は,本件準共有株式の管理に関する行為として,各共有者の持分の価格に従い,その過半数で決せられるものというべきである。 そして,前記事実関係によれば,本件議決権行使をしたBは本件準共有株式について2分の1の持分を有するにすぎず,また,残余の2分の1の持分を有する被上告人が本件議決権行使に同意していないことは明らかである。そうすると,本件議決権行使は,各共有者の持分の価格に従いその過半数で決せられているものとはいえず,民法の共有に関する規定に従ったものではないから,上告人がこれに同意しても,適法となるものではない。
7 以上によれば,本件議決権行使が不適法なものとなる結果,本件各決議は,決議の方法が法令に違反するものとして,取り消されるべきものである。これと結論を同じくする原審の判断は,是認することができる。論旨は採用することができない。
 よって,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 櫻井龍子 裁判官 金築誠志 裁判官 白木 勇 裁判官山浦善樹 裁判官 池上政幸)

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事故報告書を警察が狙っている。

怖ろしい報道がありました。  
 
報道内容が正しいならば,事故調査が直面する重大な問題が現実化したということなのでしょう。  
医療事故調査報告書に対する警察の本音なのでしょう。  
警察等の捜査機関は,病院が作成する「調査報告書」を狙っているということです。  
自分の勤務先の病院の事故調査報告書が,捜査機関に渡って,それが犯罪の立件のための資料に用いられるということが現実化してしまっているといえます。  
自分の勤務する病院等の事故調査に協力すると,自分あるいは同僚が犯罪者とされる具体的な危険が見えてしまったということになります。

以下,引用
 「女子医大、調査報告書を警視庁に 医療事故で提出、波紋も」   東京女子医大病院で昨年2月に男児=当時(2)=が死亡した医療事故で、第三者調査委員会がまとめた報告書を同病院が警視庁に任意で提出していたことが18日、関係者への取材で分かった。  医療事故調査をめぐっては「刑事責任追及と切り離すべきだ」として、医療現場には警察への報告書提出に強い反対論があり、今回の対応は波紋を広げそうだ。  女子医大病院幹部は「任意提出しなければ強制的に押収される。その方がダメージは大きく、協力すべきだと考えた」としている。  この幹部によると、第三者調査委の設置を公表していたため、結果が出たら提出するよう警視庁から文書で要請が来ていた。」
2015/02/18 21:59   【共同通信】
引用終わり
http://www.47news.jp/CN/201502/CN2015021801002139.html

 事実確認は必要だろうと思いますが。
 事実ならば,相当怖ろしい話だと思います。
 このような警察等の捜査機関の実務を前提に,今の事故調の制度が完成すると 事故調査に誰も協力しなくなって 医療安全がかえって損なわれる事態が生じてしまうことを危惧しています。

 個人的には, 医療者が,このようなリスク情報を共有し, この問題について早急に問題提起して, 現在の事故調の議論に反映させることが大事なのだろうと考えています。

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2015.02.10

講演(第26年度近畿ブロック赤十字病院医療安全推進担当者研修会)

苦情対応の基本と法律的基礎知識

第26年度近畿ブロック赤十字病院医療安全推進担当者研修会

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