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2015.02.28

「院内事故調査報告書、遺族にも見せるべきか否か?」というキャンペーンについて

「院内事故調査報告書、遺族にも見せるべきか否か?」

このようなキャンペーンをしてしまえば,結論は明らかでしょう。
「医療事故で亡くなられた遺族は開示を求めている。」,「病院側はそれに抵抗している」
という副題がつけば,流れを変えることはできないでしょう。

概ねマスコミは,このような報道しかしていないように映ります。
また,そのようなキャンペーンに打って出た者の勝ちでしょう(笑)

「原因不明の事態により大事な生命が奪われてしまっています,将来に向けて,そのような原因不明の事態から,より多くの方々の生命・身体の安全を確保するためにはどのような方法がより妥当ですか?」
という視点で考えていかなければならない問題であるのに。

そもそもなぜこのようなことが議論されているのかを,もう一度考え直す必要があるのではないかと感じております?

どうすれば,医療事故の再発からより多くの方々の生命身体を護ることができるのか?」
という視点から。

今までの議論は次のようなものであったと個人的には理解をしています。

医療事故が発生した
他の人にも発生するかも知れない
それを阻止することが大事である。
・そのためには原因を明らかにすることが必要である。
原因究明がこそが,多くの方々の生命・身体の安全を守ることへの第1歩である。
・では,原因究明はどうして行うのか。
関係者からのヒアリング等が不可欠である。
・しかし,関係者は,自己への責任追及が大前提となるならば,原因究明に協力しないことが考えられる(ここでの責任追及には,刑事責任・損害賠償責任・懲戒処分等が含まれる)。
・そうなると,不十分な原因調査に終わってしまう可能性が高くなる。
・原因調査が不十分ならば,原因の究明は困難である。
・そうなると,同種の医療事故の再発の可能性を低くすることが出来ない
・そうなると,多くの方の生命・身体の安全性が改善されないのでは?
より多くの方の生命・身体の安全性を確保が一番の価値であると考えるならば,充実した調査が出来るような環境を整えるべきである。
・できる限り事故調査に協力した者について協力したことをもってその責任が問われない体制を構築することが重要である。何でも率直に話の出来る環境作りをしよう。

参照(厚生労働法のホームページより)
医療事故調査制度について
Q1. 制度の目的は何ですか?
A1. 医療事故調査制度の目的は、医療法の「第3章 医療の安全の確保」に位置づけられているとおり、医療の安全を確保するために、医療事故の再発防止を行うことです。      
  <参考>
医療に関する有害事象の報告システムについてのWHOのドラフトガイドラインでは、報告システムは、「学習を目的としたシステム」と、「説明責任を目的としたシステム」に大別されるとされており、ほとんどのシステムではどちらか一方に焦点を当てていると述べています。その上で、学習を目的とした報告システムでは、懲罰を伴わないこと(非懲罰性)、患者、報告者、施設が特定されないこと(秘匿性)、報告システムが報告者や医療機関を処罰する権力を有するいずれの官庁からも独立していること(独立性)などが必要とされています。
今般の我が国の医療事故調査制度は、同ドラフトガイドライン上の「学習を目的としたシステム」にあたります。したがって、責任追及を目的とするものではなく、医療者が特定されないようにする方向であり、第三者機関の調査結果を警察や行政に届けるものではないことから、WHOドラフトガイドラインでいうところの非懲罰性、秘匿性、独立性といった考え方に整合的なものとなっています。
http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000061209.html

関係者の協力の成果であるところの事故調査報告書が遺族等に手渡されるならば,例え調査報告書において匿名扱いとなっていたとしても実際上は特定されてしまうことを考えると,調査への協力の妨げになる可能性がある。
よって,多くの方の生命・身体の安全性の確保に帰するためのより充実した原因究明のためには,調査報告書を一律渡してしまうことは控えるべきであって,調査報告書を渡すかどうかは,調査の過程等を十分に理解している病院管理者の判断に委ねた方がよいのではないのか?

このような議論が今までなされてきたはずです。
しかし,目の前の議論は,それが置き去りにされてしまっている感があります。
ただし,
このような理解は,かなり説明の要することであり,単刀直入を求めるマスコミが報道するには向いていないので,切り捨てられてしまう運命にあるのでしょうね。

しかし,その原点を振り返って,今一度考えてもらいたいものだと思います。
今の議論は,不特定多数のこれから被害を受けるであろう方の被害をどのように最小限に留めるのか?というものであるはずです。よって,特定の遺族のための議論では無く,もっともっと大きな理念をもった制度に関するものであり,その視点からの発想が必要であるということです。

より充実した調査がなされることによって原因が究明され,そして,その改善がなされることで利益を受けるのも,現在存命中の多くの方々なのです。
また,不十分な調査が生じることのリスクを甘受しなければならないのは,実は,現在存命中の多くの方々なのです。

多くの方々が,このような視点をもって,今一度,再考することが必要だと,私は考えています。

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