裁判例(企業関連)

2008.05.26

平成18(あ)2030商法違反被告事件(実質的経営者との共同正犯)

平成18(あ)2030商法違反被告事件
平成20年05月19日最高裁判所第一小法廷決定

原審
平成18年09月05日 名古屋高等裁判所金沢支部 
平成17(う)21

裁判要旨
銀行がした融資に係る頭取らの特別背任行為につき,融資の前提となるスキームを提案し,担保となる物件の担保価値を大幅に水増しした不動産鑑定評価書を作らせるなどして融資の実現に積極的に加担した融資先会社の実質的経営者に共同正犯の成立が認められた事例
http://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?action_id=dspDetail&hanreiSrchKbn=02&hanreiNo=36359&hanreiKbn=01

判決文(裁判所サイト)
http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20080520161602.pdf

平井利明のメモ

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2008.05.21

平成20年04月24日東京地方裁判所判決(有価証券報告書等への虚偽記載と損害賠償)

平成17(ワ)1768等損害賠償請求事件
平成20年04月24日東京地方裁判所民事第8部判決

判決文(裁判所サイト)
http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20080521162620.pdf

事案の概要(判決文より)
原告らが,被告らに対し,被告西武鉄道株式会社(以下「被告西武鉄道」という。)が株式会社コクド(以下「コクド」という。)所有にかかる被告西武鉄道の株式数を過少に記載した有価証券報告書及び半期報告書を関東財務局長等に対し継続して提出してその虚偽記載を訂正せず,また,コクドも当該虚偽記載に積極的に関与したため,被告西武鉄道の株式(以下「西武鉄道株式」という。)を取得した原告らが損害を被ったと主張し,被告西武鉄道及びコクドを吸収合併した被告株式会社プリンスホテル(以下「被告プリンスホテル」という。)に対しては不法行為(民法709条,719条1項前段)に基づき,被告西武鉄道及びコクドの代表取締役であった被告A,被告西武鉄道の代表取締役であった被告B並びに被告西武鉄道の代表取締役であった亡Dの相続人である被告Cに対しては不法行為(民法709条,719条1項前段)又は平成16年法律第97号による改正前の証券取引法(平成18年法律第65号により法律の題名が「金融商品取引法」と改められた。以下「旧証取法」という)24条の4,24条の。5第5項,22条1項に基づき,連帯して,損害賠償金及びこれらに対する不法行為の後の日である平成16年10月13日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めた事案

主  文
1 被告西武鉄道株式会社,被告株式会社プリンスホテル,被告A及び被告Bは,別紙認容額等一覧表1の「原告」欄記載の各原告に対し,連帯して,同表「認容額」欄記載の各金員及びこれらに対する平成16年10月13日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
2 被告Cは,別紙認容額等一覧表2の「原告」欄記載の各原告に対し,被告西武鉄道株式会社,被告株式会社プリンスホテル,被告A及び被告Bと連帯して,同表「認容額」欄記載の各金員及びこれらに対する平成16年10月13日から支払済みまで年5分の割合による金員を,亡Dから相続した財産の存する限度において,支払え。
3 上記原告らのその余の請求及び上記原告ら以外の原告らの請求をいずれも棄却する。
4 訴訟費用の負担は次のとおりとする。
(1) 別紙認容額等一覧表1の「1 原告」欄記載の原告らと被告西武鉄道株式会社,被告株式会社プリンスホテル,被告A及び被告Bとの間においては,当該当事者間において生じた訴訟費用のうち,当該原告らに生じた費用の3分の1及び当該被告らに生じた費用を当該被告らの負担とし,当該原告らに生じたその余の費用を当該原告らの負担とし,その余の原告らと当該被告らとの間においては,当該当事者間において生じた訴訟費用の全部をその余の原告らの負担とする。
(2) 別紙認容額等一覧表2の「2 原告」欄記載の原告らと被告Cとの間においては,当該当事者間において生じた訴訟費用のうち,当該原告らに生じた費用の3分の1及び被告Cに生じた費用を被告Cの負担とし,当該原告らに生じたその余の費用を当該原告らの負担とし,その余の原告らと被告Cとの間においては,当該当事者間において生じた訴訟費用の全部をその余の原告らの負担とする。
5 この判決は,第1項及び第2項に限り,仮に執行することができる。

平井利明のメモ

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2008.04.30

平成20年04月15日大阪地方裁判所第20民事部判決(仮装の証券取引と損害賠償)

平成15(ワ)10018損害賠償請求事件
平成20年04月15日大阪地方裁判所第20民事部判決 

判示事項の要旨
証券取引所の副理事長であった者が,同取引所の開設する証券取引市場における取引高をかさ上げするために,取引需要に基づかない取引を自ら指示して設立させた会社に実行させ,また,同取引に係る注文を受発注する証券会社の設立を主導し,そのために必要な資金を自らが代表取締役に就任している同取引所の100%子会社から出捐させたことは,同取引所に対する善管注意義務違反となるとされた事例

http://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?action_id=dspDetail&hanreiSrchKbn=04&hanreiNo=36330&hanreiKbn=03

判決文(裁判所サイト)
http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20080428140135.pdf

事案の概要(判決文より)
本件は,原告が,Ⅰ 被告Y1については,被告Y1が,i 原告の専務理事又は副理事長であった平成9年7月から平成12年3月までの間,その地位に基づき又はその地位を利用して,原告の職員等に指示をして,A社に原告の資金を提供し,A社をして原告の開設する有価証券市場(以下「X市場」という)において証券取引法が禁止。する仮装取引等を行わせ,その取引によってA社に生じた経済的損失を原告に負担させたこと,ii 平成10年法律第107号による改正(以下「平成10年改正」という。)前の証券取引法86条2項,平成12年法律第96号による改正(以下「平成12年改正」という。)前の証券取引法106条の2(以下,これらの規定を挙げるときは,上記各改正前のものをいう。)及び原告の定款2条に規定する証券取引所の業務範囲や運営目的に反して,仮装取引等の違法取引を行わせるために原告の関連会社としてB証券会社の設立を主導して行ったことは,被告Y1が専務理事又は副理事長として原告に対して負う善管注意義務に違反するなどと主張し,Ⅱ 被告Y2については,原告の理事長であった被告Y2が,被告Y1の上記Ⅰⅰの行為について監視監督を怠り,また,上記ⅠiiのB証券会社の設立を承認したことは,被告Y2が理事長として原告に対して負う善管注意義務に違反するなどと主張し,被告Y1及び被告Y2に対し,善管注意義務違反を理由とする損害賠償請求として,① 上記損失負担による損害,② B証券会社の設立に関して生じた損害並びに③ 上記Ⅰi及びⅠiiの各行為によってX市場の公正さが著しく害され,投資家及び国民の原告に対する信頼の失墜を招き,原告の名誉及び社会的信用が著しく毀損されたことによる損害の合計5億2024万5306円及びこれに対する訴状送達の日の翌日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の連帯支払を求める事案

主文
1 被告Y1は,原告に対し,2億9735万1491円及びこれに対する平成15年10月17日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
2 被告Y2は,原告に対し,1億2859万3137円及びこれに対する平成15年10月16日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
3 原告のその余の請求を棄却する。
4 訴訟費用は,原告に生じた費用の5分の2,被告Y1に生じた費用の5分の2及び被告Y2に生じた費用の4分の3を原告の負担とし,原告に生じた費用の5分の2及び被告Y1に生じた費用の5分の3を同Yの負担とし,原告に生じた費用の5分の1及び被告Y2に生じた費用の4分の1を同Yの負担とする。
5 この判決は,1項及び2項に限り,仮に執行することができる。

平井利明のメモ

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2008.04.28

平成19(ネ)418解雇無効確認等請求控訴事件(福岡高裁判決)

平成19(ネ)418解雇無効確認等請求控訴事件
平成20年03月12日福岡高等裁判所第4民事部判決 
【破棄自判】

原審
平成18(ワ)531
福岡地方裁判所判決

判示事項の要旨
一審被告のバス運転士として雇用されていた一審原告が,乗客の遺留したバスカードの領得(以下「チャージ事件」という。)等を理由に懲戒解雇されたことにつき,一審原告が,一審被告による巡視,事情聴取及び懲戒解雇は違法であると主張して,一審被告に対し,不法行為に基づく損害賠償を求めた事案について,原審は,懲戒解雇は解雇権を濫用した違法なものであると判断して,一審原告の請求を一部認容し,その余は失当として棄却した(双方控訴)が,一審被告においては,チャージ事件を起こした運転士に対しては,懲戒解雇という厳しい処分で臨んでいたこと,一審原告は,入社時教育や業務常会への参加等を通じて,一審被告がチャージ事件については被害額が少額であっても懲戒解雇とする方針でありこれを実行していたことを知っていたこと,一審被告の労働組合も,本件非違行為を理由に一審原告を懲戒解雇することを承認していること等の事実が認められる本件においては,一審被告が一審原告に対して懲戒解雇に及んだことには合理的理由があり,本件解雇は社会通念上相当として是認することができ,解雇権を濫用したものということはできず,また,一審被告による巡視,事情聴取も違法なものではなかったとして,一審被告の敗訴部分を取り消して,一審原告の請求を棄却した事例
http://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?action_id=dspDetail&hanreiSrchKbn=04&hanreiNo=36269&hanreiKbn=03

判決文(裁判所サイト)
http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20080408094433.pdf

平井利明のメモ

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2008.03.14

平成20年03月13日東京地方裁判所判決 (著明神社の著作権侵害に関するもの)

平成19(ワ)1126損害賠償請求事件
平成20年03月13日東京地方裁判所判決 
http://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?action_id=dspDetail&hanreiSrchKbn=07&hanreiNo=36027&hanreiKbn=06

判決文(裁判所サイト)
http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20080314120401.pdf

事案について(判決文よりの抜粋等・一部省略)
 本件は,原告が,(中略)被告らの各行為等は,(中略)被告らの区分(中略)に応じて,それぞれ別紙写真目録の写真の著作物(以下「本件写真」という。)に係る原告の権利を侵害すると主張して,被告らに対し,民法709条及び719条に基づいて合計300万円の損害賠償を請求した事案である。

(注:当事者名については,判決文において略称表記されたもの以外についても略称に変換してある。)

主文
1 被告Bは,原告に対し,30万円及びこれに対する平成19年2月3日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
2 被告S社は,原告に対し,22万円及びこれに対する平成19年2月3日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
3 被告S社及び被告Y神社は,原告に対し,連帯して33万円及びこれに対する平成19年2月3日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
4 被告B,被告S書院及び被告Cは,原告に対し,連帯して6万円及びこれに対する平成19年2月3日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
5 原告のその余の請求をいずれも棄却する。
6 訴訟費用は,これを50分し,その5を被告B,その4を被告S社のそれぞれ負担とし,その5を被告S社及び被告Y神社,その1を被告B,被告S書院及び被告Cのそれぞれ連帯負担とし,その余は原告の負担とする。
7 この判決は,第1項ないし第4項に限り,仮に執行することができる。

「本件水彩画ポスターの制作による本件写真の翻案権侵害,原告の氏名表示権及び同一性保持権侵害に関する被告サンケイデザイン,被告B及び被告八坂神社に対する請求について」の判断のうち,発注者である被告Y神社の責任に関して

<被告Y神社は,共同して侵害行為を行った者に当たるかとの争点についての判断>よりの抜粋
 被告Y神社は,千年以上もの伝統を有する祇園祭を執行する者であって,本件写真ポスターは,その祇園祭のいわば看板ポスターとして,京都市内各所に約1か月間貼付されたものであると認められる。
 そして,このようなポスターを必要とするに当たり,被告Y神社は,神輿を中心としたポスターを作成することとして,三若神輿会の会長である被告Bが代表取締役を務める被告S社に対して,平成15年に本件写真ポスターの制作を初めて依頼し,翌年にも本件写真ポスターの制作を依頼したことが認められる。
 このような本件写真ポスターの重要性からすれば,被告Y神社が,初めて依頼する被告S社に対して,そのポスターの写真の具体的選択につき,神輿を中心とすること等の注文をした以外は被告S社の裁量に委ねていたとしても,ポスターを大量に印刷する前には,注文者である被告Y神社が,本件写真を掲載して制作されたポスターでいいかどうかを最終確認するのが通常であるから,本件写真ポスターに本件写真を使用することを最終的に了解したのは,被告Y神社であったと解するのが相当である。
 したがって,注文者である被告Y神社は,本件写真ポスターの制作による原告の氏名表示権侵害について,被告S社と共同して侵害行為を行ったものと認めるのが相当である。

<被告Y神社には,故意又は過失があるかとの争点についての判断>よりの抜粋
 被告Y神社は,神社神道に従って祭祀等を行う宗教法人であって,千年以上もの伝統を有する祇園祭を執行するなどして信仰や文化を発信し,日本各地から広く崇敬を集める神社である。そして,被告Y神社のホームページには,Y神社写真展として,本殿(重要文化財),西楼門(重要文化財),境内摂末社その他被告Y神社の境内建物の写真を写真集としてまとめて掲載し,これらの写真の利用の許可申請を受け付けるものとしている。また,被告Y神社は,撮影を許可する際にも,著作権を損なわないよう留意する旨の撮影条件を付していることが認められる(甲9,甲13)。
 このように,被告Y神社は,重要文化財,著作物その他文化的所産を取り扱う立場にある者であって,もとより著作権に関する知識を有するものであるから,著作物を使用するに際しては,当該著作物を制作した者などから著作権の使用許諾の有無を確認するなどして,著作権を侵害しないようにすべき注意義務があるというべきである。
 本件についてみるに,上記(4)のとおり,本件写真を選択し,本件写真ポスターとすることを最終的に了解したのは,被告Y神社であったと解するのが相当であるから,被告Y神社は,その最終判断に当たり,被告S社に対して,本件写真の著作者名や当該著作者名を表示しないことに対する承諾の有無を具体的に確認し,その状況次第では,更に著作者に当該承諾の有無を直接確認するなどして,著作者人格権を侵害しないようにすべき注意義務があったというべきである
 しかしながら,被告Y神社は,このような確認行為をすべき注意義務を怠り,本件写真ポスターの制作を依頼した被告S社が本件写真の著作者名を表示せずに本件写真ポスターに本件写真を掲載するのを漫然と容認したものであって,被告Y神社には,この点において過失があるというべきである。

平井利明のメモ

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2008.03.02

平成20年02月25日知的財産高等裁判所判決(プロ野球選手による肖像権に基づく使用許諾権不存在確認請求に関する控訴事件)

平成18(ネ)10072肖像権に基づく使用許諾権不存在確認請求控訴事件
平成20年02月25日知的財産高等裁判所判決

http://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?action_id=dspDetail&hanreiSrchKbn=07&hanreiNo=35891&hanreiKbn=06

判決文(裁判所サイト)
http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20080229163349.pdf

判決文より

主文
1 本件控訴を棄却する。
2 控訴費用は控訴人らの負担とする。

事実及び理由
第1 控訴の趣旨
1 原判決を取り消す。
2 別紙当事者目録記載の各被控訴人は,それぞれ対応する別紙関係目録記載の
各控訴人との間において,プロ野球ゲームソフト及びプロ野球カードについ
て,同各控訴人の氏名,肖像を第三者に対し使用許諾する権限を有しないこと
を確認する。
3 訴訟費用は,第1,2審を通じて被控訴人らの負担とする。

「本件訴訟は,プロ野球選手である控訴人(一審原告)らが,所属の球団である各被控訴人(一審被告)らに対し,プロ野球ゲームソフト及びプロ野球カードについて,平成17年12月から平成18年1月にかけて更新された平成18年度の各選手契約に基づき,各被控訴人らが第三者に対して各控訴人らの氏名及び肖像の使用許諾をする権限を有しないことの確認を求めた事案である。」
「一審の東京地裁において争点とされたのは,(1)野球選手契約に用いられる統一契約書16条に相当する契約条項(「本件契約条項」)により,選手らの氏名及び肖像の商業的利用権(パブリシティ権)が球団に譲渡され又は独占的に使用許諾されたか,(2)本件契約条項による契約は不合理な附合契約であり民法90条に違反し無効であるか,(3)本件契約条項は私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(以下「独占禁止法」という。)2条9項5号に基づく一般指定14項の優越的地位の濫用又は13項の拘束条件付取引に当たる行為であって公序良俗に反するか,であった。」
「これにつき原審の東京地裁は,平成18年8月1日,(1)本件契約条項により,選手が球団に氏名及び肖像の使用を独占的に許諾したと解される,(2)本件契約条項は不合理な内容の附合契約とはいえず民法90条に違反しない,(3)本件契約条項は独占禁止法2条9項5号に基づく一般指定14項,13項にも当たらないから公序良俗に反することはない等として,控訴人らの請求をいずれも棄却した。そこで,一審原告たる控訴人らは,これを不服として本件控訴を提起した。」
「当審においては,前記争点のほか,本件契約条項が独占禁止法2条9項1号に基づく一般指定1項2号の共同の取引拒絶に該当し無効であるかどうかも争点とされれた。」

平井利明のメモ

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2008.03.01

平成20年02月28日最高裁判所第一小法廷判決 (保険金請求の事項の起算点に関して)

平成19(受)733保険金請求事件
平成20年02月28日最高裁判所第一小法廷判決

【破棄差戻し】

原審
東京高等裁判所平成19年01月31日判決   
平成18(ネ)4726

裁判要旨
保険契約に適用される約款に基づく履行期が合意によって延期され,保険金請求権の消滅時効の起算点がその翌日となるとされた事例

http://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?action_id=dspDetail&hanreiSrchKbn=02&hanreiNo=35867&hanreiKbn=01

判決文(裁判所サイト)
http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20080228111311.pdf

判決文より
「上告人が,その所有する車両の盗難により損害を被ったと主張して,保険会社である被上告人に対し,保険契約に基づき,車両保険金及び遅延損害金の支払を求める事案」
「被上告人は,上告人の保険金請求権が時効により消滅したと主張して争っている」

保険金支払条項による履行期は,同条項のただし書にかかわらず,保険金請求手続が行われた日からその日を含めて30日を経過した日に到来すると解すべきである(最高裁平成5年(オ)第1858号同9年3月25日第三小法廷判決・民集51巻3号1565頁参照)。」
「しかし,前記事実関係によれば,本件保険金請求権については,保険金支払条項に基づく履行期が到来した後である平成14年11月5日付けで,被上告人の代理人である弁護士から上告人に対し,本件保険金請求についてはなお調査中であり,その調査に上告人の協力を求める旨記載した本件協力依頼書が送付され,その後1か月余り経過した同年12月11日付けで,同弁護士から上告人に対し,上告人の調査への協力には感謝するが,調査の結果,本件保険金請求には応じられないとの結論に達した旨記載した本件免責通知書が送付されたというのであるから,本件協力依頼書の送付から本件免責通知書の送付までの間は,被上告人が保険金を支払うことは考えられないし,上告人も,調査に協力してその結果を待っていたものと解されるので,訴訟を提起するなどして本件保険金請求権を行使することは考えられない。」
「そうすると,被上告人の代理人による本件協力依頼書の送付行為は,上告人に対し,調査への協力を求めるとともに,調査結果が出るまでは保険金の支払ができないことについて了承を求めるもの,すなわち,保険金支払条項に基づく履行期を調査結果が出るまで延期することを求めるものであり,上告人は,調査に協力することにより,これに応じたものと解するのが相当である。したがって,本件保険金請求権の履行期は,合意によって,本件免責通知書が上告人に到達した同月12日まで延期されたものというべきである。」
「そして,本件保険契約に適用される前記普通保険約款によれば,本件消滅時効の起算点は,保険金支払条項に基づく履行期の翌日とされているものと解されるところ,その履行期が同月12日まで延期されたのであるから,本件消滅時効の起算点は翌13日となる。」
「上告人の上記主張は,このような履行期延期の主張を含むものと解される。以上によると,本件消滅時効は,本件訴訟が提起された平成16年11月26日には,いまだ完成していなかったものというべきである。」

平井利明のメモ

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2008.02.29

平成20年02月29日最高裁判所第二小法廷判決(賃料減額請求関連)

平成18(受)192賃料減額確認請求本訴,同反訴事件
平成20年02月29日最高裁判所第二小法廷判決

【破棄差戻し】

原審
大阪高等裁判所平成17年10月25日判決   
平成16(ネ)3454

裁判要旨
賃料自動改定特約のある建物賃貸借契約の賃借人から賃料減額請求がされた場合において,当事者が現実に合意した直近の賃料を基にすることなく,上記特約によって増額された賃料を基にして,増額された日から当該請求の日までの間に限定して経済事情の変動等を考慮した原審の判断に違法があるとされた事例

http://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?action_id=dspDetail&hanreiSrchKbn=02&hanreiNo=35877&hanreiKbn=01

判決文(裁判所サイト)
http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20080229105542.pdf

判決文より
「 原審は借地借家法32条1項の規定の解釈を誤ったというものであるので,この点について判断する。」
借地借家法32条1項の規定は,強行法規であり,賃料自動改定特約によってその適用を排除することはできないものである(最高裁昭和28年(オ)第861号同31年5月15日第三小法廷判決・民集10巻5号496頁,最高裁昭和54年(オ)第593号同56年4月20日第二小法廷判決・民集35巻3号656頁,最高裁平成14年(受)第689号同15年6月12日第一小法廷判決・民集57巻6号595頁参照)。そして,同項の規定に基づく賃料減額請求の当否及び相当賃料額を判断するに当たっては,賃貸借契約の当事者が現実に合意した賃料のうち直近のもの(以下,この賃料を「直近合意賃料」という。)を基にして,同賃料が合意された日以降の同項所定の経済事情の変動等のほか,諸般の事情を総合的に考慮すべきであり,賃料自動改定特約が存在したとしても,上記判断に当たっては,同特約に拘束されることはなく,上記諸般の事情の一つとして,同特約の存在や,同特約が定められるに至った経緯等が考慮の対象となるにすぎないというべきである。」
「したがって,本件各減額請求の当否及び相当純賃料の額は,本件各減額請求の直近合意賃料である本件賃貸借契約締結時の純賃料を基にして,同純賃料が合意された日から本件各減額請求の日までの間の経済事情の変動等を考慮して判断されなければならず,その際,本件自動増額特約の存在及びこれが定められるに至った経緯等も重要な考慮事情になるとしても,本件自動増額特約によって増額された純賃料を基にして,増額前の経済事情の変動等を考慮の対象から除外し,増額された日から減額請求の日までの間に限定して,その間の経済事情の変動等を考慮して判断することは許されないものといわなければならない。本件自動増額特約によって増額された純賃料は,本件賃貸契約締結時における将来の経済事情等の予測に基づくものであり,自動増額時の経済事情等の下での相当な純賃料として当事者が現実に合意したものではないから,本件各減額請求の当否及び相当純賃料の額を判断する際の基準となる直近合意賃料と認めることはできない。」
「しかるに,原審は,第1減額請求については,本件自動増額特約によって平成7年12月1日に増額された純賃料を基にして,同日以降の経済事情の変動等を考慮してその当否を判断し,第2減額請求については,本件自動増額特約によって平成9年12月1日に増額された純賃料を基にして,同日以降の経済事情の変動等を考慮してその当否を判断したものであるから,原審の判断には,法令の解釈を誤った違法があり,この違法が判決に影響を及ぼすことは明らかである。」

平井利明のメモ

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2008.02.26

平成20年02月26日最高裁判所第三小法廷判決(取締役解任請求事件)

平成19(受)1443取締役解任請求事件
平成20年02月26日最高裁判所第三小法廷判決

裁判要旨
会社法346条1項に基づき退任後もなお会社の役員としての権利義務を有する者に対する解任の訴えは許されない

http://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?action_id=dspDetail&hanreiSrchKbn=02&hanreiNo=35802&hanreiKbn=01

判決文(裁判所サイト)
http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20080226111307.pdf

判決文より
1 会社法346条1項に基づき退任後もなお会社の役員としての権利義務を有する者(以下「役員権利義務者」という。)の職務の執行に関し不正の行為又は法令若しくは定款に違反する重大な事実(以下「不正行為等」という。)があった場合において,同法854条を適用又は類推適用して株主が訴えをもって当該役員権利義務者の解任請求をすることは,許されないと解するのが相当である。

その理由は次のとおりである。
(1) 同条は,解任請求の対象につき,単に役員と規定しており,役員権利義務者を含む旨を規定していない。
(2) 同法346条2項は,裁判所は必要があると認めるときは利害関係人の申立てにより一時役員の職務を行うべき者(以下「仮役員」という。)を選任することができると定めているところ,役員権利義務者に不正行為等があり,役員を新たに選任することができない場合には,株主は,必要があると認めるときに該当するものとして,仮役員の選任を申し立てることができると解される。そして,同条1項は,役員権利義務者は新たに選任された役員が就任するまで役員としての権利義務を有すると定めているところ,新たに選任された役員には仮役員を含むものとしているから,役員権利義務者について解任請求の制度が設けられていなくても,株主は,仮役員の選任を申し立てることにより,役員権利義務者の地位を失わせることができる。
(3) 以上によれば,株主が訴えをもって役員権利義務者の解任請求をすることは,法の予定しないところというべきである。

平井利明のメモ

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2008.02.25

平成20年02月22日最高裁判所第二小法廷判決(会社の事業と無関係であることの主張立証責任)

平成19(受)528所有権移転登記抹消登記手続等請求本訴,貸金請求反訴,所有権移転登記抹消登記手続請求事件
平成20年02月22日最高裁判所第二小法廷判決

【破棄差戻し】

原審
福岡高等裁判所平成18年12月21日   
平成17(ネ)790

裁判要旨
1 会社の行為は商行為と推定され,これを争う者において当該行為が当該会社の事業のためにするものでないこと,すなわち当該会社の事業と無関係であることの主張立証責任を負う
2 会社の貸付けが当該会社の代表者の情宜に基づいてされたものとみる余地がある場合であっても,他に当該貸付けが当該会社の事業と無関係であることをうかがわせるような事情が存しない以上,当該貸付けに係る債権は商事債権に当たる

http://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?action_id=dspDetail&hanreiSrchKbn=02&hanreiNo=35796&hanreiKbn=01

判決文(裁判所サイト)
http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20080222162504.pdf

判決文より
 『原審の本件貸付けに係る債権が商行為によって生じた債権に当たるということはできないとする判断は是認することができない。その理由は,次のとおりである。
 会社の行為は商行為と推定され,これを争う者において当該行為が当該会社の事業のためにするものでないこと,すなわち当該会社の事業と無関係であることの主張立証責任を負うと解するのが相当である。なぜなら,会社がその事業としてする行為及びその事業のためにする行為は,商行為とされているので(会社法5条),会社は,自己の名をもって商行為をすることを業とする者として,商法上の商人に該当し(商法4条1項),その行為は,その事業のためにするものと推定されるからである(商法503条2項。同項にいう「営業」は,会社については「事業」と同義と解される。)。
 前記事実関係によれば,本件貸付けは会社である被上告人がしたものであるから,本件貸付けは被上告人の商行為と推定されるところ,原審の説示するとおり,本件貸付けがAの上告人に対する情宜に基づいてされたものとみる余地があるとしても,それだけでは,1億円の本件貸付けが被上告人の事業と無関係であることの立証がされたということはできず,他にこれをうかがわせるような事情が存しないことは明らかである。そうすると,本件貸付けに係る債権は,商行為によって生じた債権に当たり,同債権には商法522条の適用があるというべきである。』

平井利明のメモ

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2008.02.15

改正前証券取引法17条に定める損害賠償責任の責任主体に関して@平成20年02月15日最高裁判所第二小法廷判決

平成18(受)2084損害賠償請求事件
平成20年02月15日最高裁判所第二小法廷判決
http://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?action_id=dspDetail&hanreiSrchKbn=02&hanreiNo=35756&hanreiKbn=01

【破棄差戻し】

原審
東京高等裁判所平成18年08月09日判決   
平成17(ネ)5757

裁判要旨
証券取引法(平成16年法律第97号による改正前のもの)17条に定める損害賠償責任の責任主体は,虚偽記載のある目論見書等を使用して有価証券を取得させたといえる者であれば足り,発行者等に限られない。

判決文(裁判所サイト)
http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20080215113452.pdf

事案の骨子
本件は,上告人が,被上告人Y2に対しては,重要な事項について虚偽の表示があり又は重要な事実の表示が欠けている目論見書その他の表示(以下「虚偽記載のある目論見書等」という。)を使用して有価証券を取得させた者の損害賠償責任を定めた証券取引法(平成16年法律第97号による改正前のもの。平成18年法律第65号により法律の題名が「金融商品取引法」と改められた。以下「法」という。)17条に基づき,被上告会社に対しては,その代表者であるBがる法17条の責任を負うとして,商法(平成17年法律第87号による改正前のもの)261条3項,78条2項,民法44条1項に基づき,本件証券の取得代金相当額30億円のうち1億円及びこれに対する遅延損害金の支払を求める事案

判決文より
「法は,何人も有価証券の募集又は売出しのために法定の記載内容と異なる内容を記載した目論見書を使用し,又は法定の記載内容と異なる内容の表示をしてはならないと定めていること(13条5項),重要な事項について虚偽の記載があり又は重要な事実の記載が欠けている目論見書を作成した発行者の損害賠償責任については,法17条とは別に法18条2項に規定されていることなどに照らすと,法17条に定める損害賠償責任の責任主体は,虚偽記載のある目論見書等を使用して有価証券を取得させたといえる者であれば足り,発行者等に限るとすることはできない。」
「確定事実によれば,B及び被上告人Y2は,Aグループに属する会社の代表取締役又は取締役として,上告人に対し,重要な事項について虚偽の表示がある本件目論見書を交付して本件証券の取得につきあっせん,勧誘を行い,あるいはC社とともに本件証券の内容について説明し,その結果上告人は本件証券を取得するに至ったというのであるから,法17条に定める損害賠償責任の責任主体となるというべきである。」
「B及び被上告人Y2について法17条ただし書の免責事由の存否等について更に審理を尽くさせるため,上記部分につき本件を原審に差し戻すこととする。」

平井利明のメモ

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2008.01.28

融資を決定した取締役らに忠実義務,善管注意義務違反がある等の場合(最高裁判所)

平成17(受)1440損害賠償請求事件
平成20年01月28日最高裁判所第二小法廷判決

破棄自判

http://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?action_id=dspDetail&hanreiSrchKbn=02&hanreiNo=35633&hanreiKbn=01

原審
札幌高等裁判所平成17年03月25日判決    
原審事件番号 平成15(ネ)92

裁判要旨
1 銀行が,第三者割当増資を計画する企業から新株引受先として予定された当該企業の関連会社に対する引受代金相当額の融資を求められ,これを実行した場合において,同融資を決定した取締役らに忠実義務,善管注意義務違反があるとされた事例
2 銀行が,積極的な融資の対象であったが大幅な債務超過となって破たんに直面した企業に対し,同企業を数か月延命させる目的で追加融資を実行した場合において,同融資を決定した取締役らに忠実義務,善管注意義務違反があるとされた事例

事案の概要(判決文より)
預金保険法附則7条1項所定の整理回収業務を行う上告人が,経営
破たんしたA銀行(以下「A銀行」という。)の取締役であった被上告人らに対し,A銀行のB社に対する融資の際に被上告人らに忠実義務,善管注意義務違反があったと主張して,商法(平成17年法律第87号による改正前のもの。以下同じ。)266条1項5号に基づく損害賠償の一部請求をする事案

判決文(裁判所サイト)
http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20080128144120.pdf

平井利明のメモ

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融資を決定した取締役らの忠実義務,善管注意義務違反に関して(最高裁判所)

平成17(受)1372損害賠償請求事件
平成20年01月28日最高裁判所第二小法廷判決
http://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?action_id=dspDetail&hanreiSrchKbn=02&hanreiNo=35632&hanreiKbn=01

破棄自判

原審
札幌高等裁判所平成17年03月25日判決
平成14(ネ)368

裁判要旨
銀行が,支払可能残高を超えて振り出された他行支払小切手を即日入金の上払い戻す取扱いをしていた債務者から,担保を提供する条件として追加融資を求められ,これを実行した場合において,融資を決定した取締役らに忠実義務,善管注意義務違反があるとされた事例

事案の概要(判決文より)
預金保険法附則7条1項所定の整理回収業務を行う上告人が,経営破たんしたA銀行(以下「A銀行」という。)の取締役であった被上告人らに対し,A銀行の株式会社B不動産(以下「B不動産」という。)に対する融資の際に被上告人らに忠実義務,善管注意義務違反があったと主張して,商法(平成17年法律第87号による改正前のもの。以下同じ。)266条1項5号に基づく損害賠償の一部請求として10億円及びこれに対する遅延損害金の連帯支払を求める事案

判決文(裁判所サイト)
http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20080128131636.pdf

平井利明のメモ

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改正前商法266条1項5号に基づく会社の取締役に対する損害賠償請求権の消滅時効期間(最高裁判所)

平成18(受)1074損害賠償請求事件
平成20年01月28日最高裁判所第二小法廷判決
http://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?action_id=dspDetail&hanreiSrchKbn=02&hanreiNo=35631&hanreiKbn=01

原審
札幌高等裁判所平成18年03月02日判決   
平成14(ネ)404
原審裁判年月日 

裁判要旨
商法(平成17年法律第87号による改正前のもの)266条1項5号に基づく会社の取締役に対する損害賠償請求権の消滅時効期間は10年である

争点の概要(判決文より)
預金保険法附則7条1項所定の整理回収業務を行う被上告人が,銀行の取締役であった上告人に対し,融資の際に上告人に忠実義務,善管注意義務違反があったと主張して,商法(平成17年法律第87号による改正前のもの。以下同じ。)266条1項5号に基づく損害賠償請求をする事案であり,同損害賠償請求権の消滅時効期間が争点

判決文(裁判所サイト)
http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20080128140650.pdf

平井利明のメモ

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2007.12.15

平成19年12月11日最高裁判所第三小法廷決定(金融機関の守秘義務と文書提出命令)

平成19(許)23文書提出命令に対する抗告審の取消決定に対する許可抗告事件
平成19年12月11日最高裁判所第三小法廷決定

破棄自判

原審
名古屋高等裁判所平成19年03月14日決定   
平成19(ラ)26

裁判要旨
1 金融機関が民事訴訟において訴訟外の第三者として開示を求められた顧客情報について,当該顧客自身が当該民事訴訟の当事者として開示義務を負う場合に,同情報は,民訴法197条1項3号にいう職業の秘密として保護されるか
2 金融機関と顧客との取引履歴が記載された明細表が,民訴法197条1項3号にいう職業の秘密として保護されるべき情報が記載された文書とはいえないとして,同法220条4号ハ所定の文書に該当しないとされた事例

http://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?action_id=dspDetail&hanreiSrchKbn=02&hanreiNo=35493&hanreiKbn=01

決定文(裁判所サイト) 
http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20071214105450.pdf

決定文より       
「本件明細表は,相手方とその顧客であるBとの取引履歴が記載されたものであり,相手方は,同取引履歴を秘匿する独自の利益を有するものとはいえず,これについてBとの関係において守秘義務を負っているにすぎない。そして,本件明細表は,本案の訴訟当事者であるBがこれを所持しているとすれば,民訴法220条4号所定の事由のいずれにも該当せず,提出義務の認められる文書であるから,Bは本件明細表に記載された取引履歴について相手方の守秘義務によって保護されるべき正当な利益を有さず,相手方が本案訴訟において本件明細表を提出しても,守秘義務に違反するものではないというべきである。そうすると,本件明細表は,職業の秘密として保護されるべき情報が記載された文書とはいえないから,相手方は,本件申立てに対して本件明細表の提出を拒否することはできない。 」    

なお,裁判官田原睦夫氏の金融機関の保持する顧客情報と文書提出命令の関係についての詳細な補足意見が付されている。                  

平井利明のメモ

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2007.12.09

平成19年11月30日最高裁判所第二小法廷決定(銀行の自己査定文書)

平成19年11月30日最高裁判所第二小法廷決定
平成19(許)5文書提出命令に対する抗告審の変更決定に対する許可抗告事件
http://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?action_id=dspDetail&hanreiSrchKbn=02&hanreiNo=35459&hanreiKbn=01

【破棄差戻し】

主文
原決定を破棄する。
本件を東京高等裁判所に差し戻す。

原審
東京高等裁判所平成19年01月10日   
平成18(ラ)1348

裁判要旨
銀行が法令により義務付けられた資産査定の前提として債務者区分を行うために作成し,保存している資料は,民訴法220条4号ニ所定の「専ら文書の所持者の利用に供するための文書」に当たらない

決定文(裁判所サイト)
http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20071204095341.pdf

【開示要求の対象となった文書】
『相手方が,平成16年3月,同年7月及び同年11月の各時点において,Aの経営状況の把握,同社に対する貸出金の管理及び同社の債務者区分の決定等を行う目的で作成し,保管していた自己査定資料一式』
  ↑
『抗告人らが提出を求めている本件文書は,銀行である相手方が,融資先であるAについて,同社に対して有する債権の資産査定を行う前提となる債務者区分を行うために作成し,監督官庁による査定結果の正確性についての事後的検証に備える目的もあって保存した資料である。』

【開示基準】
『ある文書が,その作成目的,記載内容,これを現在の所持者が所持するに至るまでの経緯,その他の事情から判断して,専ら内部の者の利用に供する目的で作成され,外部の者に開示することが予定されていない文書であって,開示されると個人のプライバシーが侵害されたり個人ないし団体の自由な意思形成が阻害されたりするなど,開示によって所持者の側に看過し難い不利益が生ずるおそれがあると認められる場合には,特段の事情がない限り,当該文書は民訴法220条4号ニ所定の「専ら文書の所持者の利用に供するための文書」に当たると解するのが相当である(最高裁平成11年(許)第2号同年11月12日第二小法廷決定・民集53巻8号1787頁参照)。』

【あてはめ】
相手方は,法令により資産査定が義務付けられている
[参考:裁判所の示す関連条項等]
 銀行法14条の2
 同法25条
 同法26条
 「預金等受入金融機関に係る検査マニュアルについて」と題する金融監督庁検査部長通達(平成11年金検第177号)
 金融検査マニュアル
 金融機能の再生のための緊急措置に関する法律6条1項
 同法7条
 同法6条2項
 同法施行規則4条

  ↓
本件文書は,相手方が,融資先であるAについて,前記検査マニュアルに沿って,同社に対して有する債権の資産査定を行う前提となる債務者区分を行うために作成し,事後的検証に備える目的もあって保存した資料
  ↓
本件文書は,前記資産査定のために必要な資料であり,監督官庁による資産査定に関する前記検査において,資産査定の正確性を裏付ける資料として必要とされているものであるから,相手方自身による利用にとどまらず,相手方以外の者による利用が予定されているものということができる。
  ↓
本件文書は,専ら内部の者の利用に供する目的で作成され,外部の者に開示することが予定されていない文書であるということはできず,民訴法220条4号ニ所定の「専ら文書の所持者の利用に供するための文書」に当たらないというべきである。
  ↓
本件文書について,民訴法220条4号ニ所定の文書に当たるとして相手方の提出義務を否定した原審の判断には,裁判に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反がある。論旨は理由があり,原決定は破棄を免れない。

【差し戻し】
本件文書が同号ハ所定の文書に該当するかどうか,本件文書中にこれに該当する部分がある場合にその部分を除いて提出を命ずるべきかどうか等について更に審理を尽くさせるため,本件を原審に差し戻す

民事訴訟法第220条(文書提出義務)
次に掲げる場合には、文書の所持者は、その提出を拒むことができない。
1.当事者が訴訟において引用した文書を自ら所持するとき。
2.挙証者が文書の所持者に対しその引渡し又は閲覧を求めることができるとき。
3.文書が挙証者の利益のために作成され、又は挙証者と文書の所持者との間の法律関係について作成されたとき。
4.前3号に掲げる場合のほか、文書が次に掲げるもののいずれにも該当しないとき。
イ 文書の所持者又は文書の所持者と第196条各号に掲げる関係を有する者についての同条に規定する事項が記載されている文書
ロ 公務員の職務上の秘密に関する文書でその提出により公共の利益を害し、又は公務の遂行に著しい支障を生ずるおそれがあるもの
ハ 第197条第1項第2号に規定する事実又は同項第3号に規定する事項で、黙秘の義務が免除されていないものが記載されている文書
ニ 専ら文書の所持者の利用に供するための文書(国又は地方公共団体が所持する文書にあっては、公務員が組織的に用いるものを除く。)
ホ 刑事事件に係る訴訟に関する書類若しくは少年の保護事件の記録又はこれらの事件において押収されている文書

平井利明のメモ

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2007.08.28

平成19年08月23日最高裁決定(文書提出命令関係)

平成19(許)18文書提出命令に対する抗告審の変更決定に対する許可抗告事件
平成19年08月23日最高裁判所第二小法廷決定
破棄自判

原審
福岡高等裁判所平成19(ラ)23
平成19年02月21日決定

裁判要旨
介護サービス事業者が介護給付費等の請求のために審査支払機関に伝送する情報を利用者の個人情報を除いて一覧表にまとめた文書が,民訴法220条4号ニ所定の「専ら文書の所持者の利用に供するための文書」に当たらないとされた事例

決定文


最高裁平成11年(許)第2号同年11月12日第二小法廷決定(民集53巻8号1787頁)の内容の再確認及びそこで定立された基準のあてはめということか。

   平井利明のメモ

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2007.08.08

株主総会決議禁止等仮処分命令申立て却下決定に対する抗告棄却決定に対する許可抗告事件(最高裁決定・ブルドッグソース事件)

平成19(許)30株主総会決議禁止等仮処分命令申立て却下決定に対する抗告棄却決定に対する許可抗告事件
平成19年08月07日最高裁判所第二小法廷決定

原審
東京高等裁判所平成19年07月09日決定
平成19(ラ)917

裁判要旨
1 株式会社が特定の株主による株式の公開買付けに対抗して当該株主の持株比率を低下させるためにする新株予約権の無償割当てが,株主平等の原則の趣旨に反せず会社法247条1号所定の「法令又は定款に違反する場合」に該当しないとされた事例
2 株式会社が特定の株主による株式の公開買付けに対抗して当該株主の持株比率を低下させるためにする新株予約権の無償割当てが,会社法247条2号所定の「著しく不公正な方法により行われる場合」に該当しないとされた事例

裁判所サイト
決定文


     平井利明のメモ

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株主総会決議禁止等仮処分命令申立却下決定に対する抗告事件(東京高裁決定・ブルドッグソース事件)

平成19(ラ)917 株主総会決議禁止等仮処分命令申立却下決定に対する抗告事件
平成19年07月09日東京高等裁判所 第15民事部決定

原審
東京地方裁判所
平成19(ヨ)20081

判示事項の要旨
1 買収防衛策自体は,明文の根拠を有しないものであるが,証券取引法,会社法はこれを排斥するものとは解されず,合理的な事情がある場合には是認されるべきものであり,また,その手段としての新株予約権無償割当てが株主平等原則に反する,あるいは不公正発行に当たるかどうかの具体的判断は,買収者及び被買収者の属性も考慮の上,公開買付け行為の態様と対比し,買収防衛策を導入すべき必要性の存否,買収防衛策としての相当性の存否について検討の上,相対的に判断すべきものである。
2 会社法は株主平等原則を定めているが,株主間に差別的な取扱いがなされたとしても,この点に合理的な理由があれば,株主平等原則に反するものではない。また,会社法に定める株主の権利行使は当然のことながら,信義誠実等の基本的な法規範の規律の下にあり,権利の濫用にわたるような行使は許されないのであるから,他者の権利との相対的な関係において一定の場合には制約を受けることがある。したがって,株主の属性によって株主間に差異を設けることが当該会社の企業価値の毀損を防止するために必要かつ相当で合理的なものである場合には,それは株主平等原則に反しないというべきである。
3 株式会社は,理念的には企業価値を可能な限り最大化してそれを株主に分配するための営利組織であるが,同時に単独で営利追求活動はできない1個の社会的存在であり,対内的には従業員を抱え,対外的には取引先,消費者等との経済的な活動を通じて利益を獲得している存在であるから,従業員,取引先など多種多様な利害関係人との不可分な関係を視野に入れた上で企業価値を高めていくべきものであり,企業価値について,専ら株主利益のみを考慮するという考え方には限界があり採用することができない。真に会社経営に参加する意思がないにもかかわらず,専ら当該会社の株価を上昇させて当該株式を高値で会社関係者等に引き取らせる目的で買収を行うなどのいわゆる濫用的買収者が,濫用的な会社運営を行うないし支配することは,会社の健全な経営という観点を欠くのであるから,結局はその株式会社の企業価値を損ない,ひいては株主共同の利益を害するものであり,このような濫用的買収者は株主として差別的取扱を受けることがあったとしてもやむを得ない。それゆえ,そのようなおそれがある場合において,株式会社が特定の株主による支配権の取得について制限を加えるなどして,企業価値を確保又は向上させることを目的とする買収防衛策を導入することは,対抗手段として必要性,相当性が認められる限りにおいて株式会社の存立目的に照らし適法かつ合理的なものである。したがって,買収防衛策が上記のようなものであれば,本件新株予約権無償割当ての結果として買収者の持株比率の低下等の事態が生じたとしても,それをもって著しく不公正な方法により行われる場合に当たるということはできない。

裁判所サイト
決定文


   平井利明のメモ

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株主総会決議禁止等仮処分命令申立(東京地裁決定・ブルドッグソース事件)

平成19(ヨ)20081株主総会決議禁止等仮処分命令申立
平成19年06月28日東京地方裁判所民事第8部決定

裁判所サイト
決定文

   平井利明のメモ

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2007.08.07

平成19年07月12日最高裁判所決定(証券取引法違反被告事件)

平成18(あ)2174証券取引法違反被告事件
平成19年07月12日最高裁判所第一小法廷決定

原審
大阪高等裁判所平成18年10月06日
平成17(う)774

裁判要旨
1 出来高に関し他人に誤解を生じさせる目的は,証券取引法(平成12年法律第96号による改正前のもの)159条1項柱書きにいう「取引が繁盛に行われていると誤解させる等これらの取引の状況に関し他人に誤解を生じさせる目的」に当たる
2 いわゆる自己両建ての有価証券オプション取引は,証券取引法(平成12年法律第96号による改正前のもの)159条1項3号にいう「オプションの付与又は取得を目的としない仮装の有価証券オプション取引」に当たる
とのこと。

裁判所サイト
判決文

  平井利明のメモ

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平成19年07月06日最高裁判所判決(ストックオプション関連)

平成18(行ヒ)295所得税更正処分等取消請求事件
平成19年07月06日最高裁判所第二小法廷判決

原審
東京高等裁判所平成18年06月29日
平成18(行コ)33

裁判要旨
「納税者が勤務先の日本法人の親会社である米国法人から付与されたストックオプションの権利行使益を一時所得として所得税の申告をしたことにつき,国税通則法65条4項にいう「正当な理由」があるとされた事例」

裁判所サイト
判決文

    平井利明のメモ

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最高裁平成19年07月05日判決(根抵当権設定登記抹消登記手続等請求事件)

平成18(受)597根抵当権設定登記抹消登記手続等請求事件
平成19年07月05日最高裁判所第一小法廷判決(破棄自判)

原審
大阪高等裁判所平成17年12月14日判決
平成17(ネ)2420

裁判要旨
「信用保証協会を債権者とし,被担保債権の範囲を保証委託取引により生ずる債権として設定された根抵当権の被担保債権に,信用保証協会の根抵当債務者に対する保証債権は含まれない」
とのこと。

裁判所サイト
判決文

    平井利明のメモ

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