民法及び商法における「不可抗力」
民法及び商法における「不可抗力」という用語を含んだ規定
なお,
不可抗力,無過失,責めに帰すべき事由がないこと,責(任)を免ずる
いかなる関係にあるのか
ひとつの典型的な規定が
第594条1項「旅店、飲食店、浴場其他客の来集を目的とする場屋の主人は客より寄託を受けたる物品の滅失又は毀損に付き其不可抗力に因りたることを証明するに非されは損害賠償の責を免るることを得す」
なのだろうが。
混迷
不可抗力
民法(民法第1編第2編第3編)(明治29年4月27日法律第89号)
(小作料の減免)
第274条
永小作人は、【不可抗力】により収益について損失を受けたときであっても、小作料の免除又は減額を請求することができない。
(永小作権の放棄)
第275条
永小作人は、【不可抗力】によって、引き続き3年以上全く収益を得ず、又は5年以上小作料より少ない収益を得たときは、その権利を放棄することができる。
(転質)
第348条
質権者は、その権利の存続期間内において、自己の責任で、質物について、転質をすることができる。この場合において、転質をしたことによって生じた損失については、【不可抗力】によるものであっても、その責任を負う。
(金銭債務の特則)
第419条
金銭の給付を目的とする債務の不履行については、その損害賠償の額は、法定利率によって定める。ただし、約定利率が法定利率を超えるときは、約定利率による。
2 前項の損害賠償については、債権者は、損害の証明をすることを要しない。
3 第1項の損害賠償については、債務者は、【不可抗力】をもって抗弁とすることができない。
(減収による賃料の減額請求)
第609条
収益を目的とする土地の賃借人は、【不可抗力】によって賃料より少ない収益を得たときは、その収益の額に至るまで、賃料の減額を請求することができる。ただし、宅地の賃貸借については、この限りでない。
(減収による解除)
第610条
前条の場合において、同条の賃借人は、【不可抗力】によって引き続き2年以上賃料より少ない収益を得たときは、契約の解除をすることができる
商法(明治32年3月9日法律第48号)
第576条
運送品の全部又は一部か【不可抗力】に因りて滅失したるときは運送人は其運送賃を請求することを得す若し運送人か既に其運送賃の全部又は一部を受取りたるときは之を返還することを要す
二項 運送品の全部又は一部か其性質若くは瑕疵又は荷送人の過失に因りて滅失したるときは運送人は運送賃の全額を請求することを得
第594条
旅店、飲食店、浴場其他客の来集を目的とする場屋の主人は客より寄託を受けたる物品の滅失又は毀損に付き其【不可抗力】に因りたることを証明するに非されは損害賠償の責を免るることを得す
二項 客か特に寄託せさる物品と雖も場屋中に携帯したる物品か場屋の主人又は其使用人の不注意に因りて滅失又は毀損したるときは場屋の主人は損害賠償の責に任す
三項 客の携帯品に付き責任を負はさる旨を告示したるときと雖も場屋の主人は前2項の責任を免るることを得す
第741条
船舶の全部を以て運送契約の目的と為したる場合に於て運送品を船積するに必要なる準備か整頓したるときは船舶所有者は遅滞なく傭船者に対して其通知を発することを要す
2項 傭船者か運送品を船積すへき期間の定ある場合に於ては其期間は前項の通知ありたる日の翌日より之を起算す其期間経過の後運送品を船積したるときは船舶所有者は特約なきときと雖も相当の報酬を請求することを得
3項 前項の期間中には【不可抗力】に因りて船積を為すこと能はさる日を算入せす
第752条
船舶の全部又は一部を以て運送契約の目的と為したる場合に於て運送品を陸揚するに必要なる準備か整頓したるときは船長は遅滞なく荷受人に対して其通知を発することを要す
二項 運送品を陸揚すへき期間の定ある場合に於ては其期間は前項の通知ありたる日の翌日より之を起算す其期間経過の後運送品を陸揚したるときは船舶所有者は特約なきときと雖も相当の報酬を請求することを得
三項 前項の期間中には【不可抗力】に因りて陸揚を為すこと能はさる日を算入せす
四項 箇箇の運送品を以て運送契約の目的と為したるときは荷受人は船長の指図に従ひ遅滞なく運送品を陸揚することを要す
第756条
期間を以て運送賃を定めたるときは其額は運送品の船積著手の日より其陸揚終了の日まての期間に依りて之を定む但船舶か【不可抗力】に因り発航港若くは航海の途中に於て碇泊を為すへきとき又は航海の途中に於て船舶を修繕すへきときは其期間は之を算入せす第741条第2項又は第752条第2項の場合に於て船積期間又は陸揚期間経過の後運送品の船積又は陸揚を為したる日数亦同し
第760条
船舶の全部を以て運送契約の目的と為したる場合に於ては其契約は左の事由に因りて終了す
1 船舶が沈没したること
2 船舶が修繕すること能はざるに至りたること
3 船舶が捕獲せられたること
4 運送品か【不可抗力】に因りて滅失したること
二項 前項第1号乃至第3号に掲けたる事由か航海中に生したるときは傭船者は運送の割合に応し運送品の価格を超えさる限度に於て運送賃を支払ふことを要す
第761条
航海又は運送か法令に反するに至りたるとき其他【不可抗力】に因りて契約を為したる目的を達すること能はさるに至りたるときは各当事者は契約の解除を為すことを得
二項 前項に掲けたる事由か発航後に生したる場合に於て契約の解除を為したるときは傭船者は運送の割合に応して運送賃を支払ふことを要す
第782条
旅客か発航前に死亡、疾病其他一身に関する【不可抗力】に因りて航海を為すこと能はさるに至りたるときは船舶所有者は運送賃の4分の1を請求することを得
二項 前項に掲けたる事由か発航後に生したるときは船舶所有者は其選択に従ひ運送賃の4分の1を請求し又は運送の割合に応して運送賃を請求することを得
第799条
本章の規定は船舶か【不可抗力】に因り発航港又は航海の途中に於て碇泊を為す為めに要する費用に之を準用す
第821条
一航海に付き船舶を保険に付したる場合に於ては保険者の責任は荷物又は底荷の船積に著手したる時を以て始まる
二項 荷物又は底荷の船積を為したる後船舶を保険に付したるときは保険者の責任は契約成立の時を以て始まる
三項 前2項の場合に於て保険者の責任は到達港に於て荷物又は底荷の陸揚か終了したる時を以て終はる但其陸揚か【不可抗力】に因らすして遅延したるときは其終了すへかりし時を以て終はる
第825条
被保険者か発航を為し若くは航海を継続することを怠り又は航路を変更し其他著しく危険を変更若くは増加したるときは保険者は其変更又は増加以後の事故に付き責任を負ふことなし但其変更又は増加か事故の発生に影響を及ほささりしとき又は保険者の負担に帰すへき【不可抗力】若くは正当の理由に因りて生したるときは此限に在らす
第832条
航海の途中に於て【不可抗力】に因り保険の目的たる積荷を売却したるときは其売却に依りて得たる代価の中より運送賃其他の費用を控除したるものと保険価額との差を以て保険者の負担とす但保険価額の一部を保険に付したる場合に於て第636条の適用を妨けす
二項 前項の場合に於て買主か代価を支払はさるときは保険者は其支払を為すことを要す但其支払を為したるときは被保険者の買主に対して有せる権利を取得す
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