産科医療補償制度加入規約(日本医療機能評価機構)
産科医療補償制度加入規約(日本医療機能評価機構)
http://www2.jcqhc.or.jp/html/documents/pdf/obstetrics/obstetrics_kiyaku.pdf
が公表されている。
先日、日本医療機能評価機構のご担当のお話を聞く機会があった。我が国における各種の既存の制度や色々な考え方との葛藤がある中で、あまり時間をかけることも出来ないという中で生み出されてきたこの度の産科医療保障制度について、ご苦労をあわせてかなり理解できた部分がある。
当初から完璧な制度というものを作ることは現実的に無理であり、立ち上げたあとで修正を加えていくことも実際的な対応であることも理解できる。
但し、制度としては色々なリスク要因が存在するようでもあり、運用面での工夫や制度に対する誤解を招来させないような配慮は、最大限必要となろう。
なお、お話を聴く機会において、規約のウェブサイト等で公表することが望ましいのではないかとの意見を述べたところ、ウェブ上で公表する方向で検討するとの回答であった。
その後早々にアップされていることを考えると素晴らしい対応であると思う。機構のこの制度に賭ける意気込みがうかがえる。ただし、個人的に残念に思うことは、このような情報は、テキスト情報の抽出が出来るようになっていればより適切なことだと思えるのだが、そうはなっていない点か。
規約内容を読んで、考えるべき点はある。
いずれにせよ、制度への「誤解」が新たな紛争のネタとなることは避けなければならないことである。
この保険制度の骨子は、「この保険制度に加入した病院等(加入分娩機関)」での「全ての出産」について適用がある、ということにある。
従って、
①この保険に加入していない病院等での出産には保険の適用がない。
②この保険に加入している病院等での出産であれば(例えば、妊婦による掛金相当金の支払の有無等にかかわらず)保険の適用がある。
ということである。
よって、次のような「誤解」の発生に注意すべきであろう。、
1)この保険制度においては、「妊婦の登録」という制度が設けられている。従って、登録されていればそれで保険適用があると安心してしまうことが考えられる(場合によっては、妊婦は、病院が機構に対して支払うべき掛金に対応する費用負担を既に行っていることがあり、その場合には尚更でしょう)。
しかし,登録をされていても,(緊急場面等が考えられますが),実際に出産した場所が保険未加入の病院等である場合には,いざという場合に補償を受けることが出来ないことになる。
従って、妊婦の登録やその費用の支払いを妊婦から受けるときには、この点を十分に理解しておいていただく必要があろう。
2)妊婦が何らかの理由で掛金に相当するお金を支払わない場合において、病院の方でそのような場合にはこの保険の適用がないと考えてしまうようなことも考えられる。しかし、その病院が加入病院であれば、妊婦からの支払の有無とは関係無く、保険の適用はある(補償金の受領ができることになる)。このような場合において、病院側が妊婦の登録を行わず且つ機構に対して掛金の支払を怠ったとすれば(支払うとすれば実質的には病院側の自腹ということになるのだが)保険会社は補償金の支払いを行わない、そして、その病院等が自腹で補償金を支払わなければならないとされている(規約第16条2項)のである。
思いこみによって、そのことが新たなトラブルを招くことがないように、「システム」及び「規約」の内容を理解する必要があるということです。
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