平成22年03月18日最高裁判所第一小法廷判決(要素の錯誤関連)
平成20(受)1392各損害賠償,理事会決議無効確認等請求事件
平成22年03月18日最高裁判所第一小法廷判決
【破棄差戻し】
原審
東京高等裁判所
平成18(ネ)162
平成20年05月22日
裁判要旨
学校法人の理事がした辞任の意思表示及び同法人の理事会において後任理事の選任決議案に賛成する旨の議決権の行使が要素の錯誤により無効であるとはいえないとされた事例
判決文
http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20100318141734.pdf
判決文より
「上告人Y1(以下「上告人Y1」という。)の理事であった被上告人らが,上告人Y1の理事会において,上告人Y2及び同Y3を上告人Y1の新理事に選任する旨の決議がされたことにつき,①上記決議における理事らの議決権の行使は錯誤により無効である,②上記議決権の行使は詐欺によるものであるから取り消す,③上記決議は解除条件の成就により失効したなどと主張して,上告人らに対し,上記決議が無効であることの確認等を求める事案」
「金融機関と交渉して当該金融機関に対する連帯保証人の保証債務を免れさせるという債務を履行する力量についての誤信は,ただ単に,債務者にその債務を履行する能力があると信頼したにもかかわらず,実際にはその能力がなく,その債務を履行することができなかったというだけでは,民法95条にいう要素の錯誤とするに足りず,」
「債務者自身の資力,他からの資金調達の見込み等,債務の履行可能性を左右すべき重要な具体的事実に関する認識に誤りがあり,それが表示されていた場合に初めて,要素の錯誤となり得るというべきである。」
「前記認定事実によれば,被上告人らが上告人Y2に本件合意を履行する能力があると信じた事情として,上告人Y2から前記の大物3名の上告人Y1の理事への就任が予定され,将来的にはC大学がA学園を経営することになるという説明がされたことがあるが,これらは,本件議決権行使等の当時においては現実に存在した事柄であったということができ,その後同理事らが辞任するなどし,C大学側との協議が成立するに至らなかったとしても,本件議決権行使等の当時においてこれらの点につき錯誤があったことになるものではない。」
「そのほかに,上告人Y2の資力,資金調達の見込み等,債務の履行可能性を左右すべき重要な具体的事実に関して,被上告人らに錯誤があったことをうかがわせる事情は存しないから,上告人Y2が本件債務を履行する力量を備えているものと信頼していたとしても,その信頼が表示されていたか否かにかかわらず,要素の錯誤があったものとはいえない。」
「そうすると,旧理事らによる本件議決権行使等が要素の錯誤により無効であるということはできない。」
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