2010年4月1日に,人工多能性幹細胞(iPS細胞)研究に特化した京都大学のiPS細胞研究所(Center for iPS Cell Research and Application: CiRA)が設立されていたのだが,本日,報道関係者に対して公開されたとのこと。
テレビに映し出された施設は,立派そのもの。
iPS細胞研究所(京都市左京区)は地上5階,地下1階建の建物からなり約47億円をかけたとのこと。それまで分散していた研究拠点が集約され,研究者やスタッフは約120人となるとのこと。研究所の所長はマウスiPS細胞を初めて作り出した山中伸弥教授。
http://www.cira.kyoto-u.ac.jp/j/index.html
素晴らしいことである。
現在,並行して読み進めている本の一つに「ブレイクスルーの科学者たち」(竹内薫著,PHP新書,2010年4月刊)がある。その中で取り上げられた一番手が山中教授である。
著者である竹内氏による取材は,2008年7月(iPS細胞の発見が発表されたのはその2年前となる2006年8月)に行われたとのことだが,『階段を上がって,リノリューム張りの廊下を歩いてゆくと,薄っぺらい扉の向こうにiPSプロジェクトの長である山中伸弥教授の研究室があった。正直いって,驚きを隠せなかった。なぜなら(中略),われわれの面前には,「ようやくクーラーを入れてもらいました」というプレハブ調の極めて質素な応接室が出現した。』とのことである。
素晴らしい設備とスタッフにより,多くの患者が救われる日が近くなることを期待するばかりである。昨日(5月7日)には,人工多能性幹細胞(iPS細胞)の特許管理会社である「iPSアカデミアジャパン」が,特許技術のライセンス契約を初めての海外企業と締結したことが公表されている(毎日新聞)。
他方,昨日は,京都大人文科学研究所の加藤和人准教授(生命倫理)らが,政府や研究者社会の姿勢により研究が阻害されているとする旨の論評を6日付の米科学誌に発表したことも報じられている(毎日新聞)。
なお,上記著書の「はじめに」と記されら個所には「科学技術は伝え続けないと,社会から切り捨てられてしまう。本書にご登場いただいた科学者は全員,私の危機感を共有してくれている(だから取材を受けてくれたのだ!)。」とある。
我が国における科学の振興のためには,色々な意味での科学の現状のへの理解が必要だと思う。私は数学的素養及び科学的素養に欠ける者ではあるが,同書は,非常に読みやすい書である。そして,科学そして科学者への関心を持つきっかけになる書だと思うので,お薦めの一冊と思っている。
平井利明のメモ